コヨリムシ(読み)こよりむし

改訂新版 世界大百科事典 「コヨリムシ」の意味・わかりやすい解説

コヨリムシ (紙縒虫)
micro-whip-scorpion

蛛形(ちゆけい)綱のコヨリムシ目(鬚脚(しゆきやく)目)Palpigradiに属する小型の節足動物。体長は2mmにみたないものが多く,全体白色腹部の後端に14~15節からなる細長い数珠状の尾があり,これをこよりに見立てて呼ばれるようになった。歩脚は4対であるが,触肢が歩脚のように長く,その先端にはつめまであるので,一見したところ歩脚が5対あるように見える。鋏角(きようかく)は大きく,よく発達している。暗く湿った場所を好み,とくに土中に半分埋もれた石の下に発見されることが多い。なにを食べて生活しているか不明である。触肢と第2~4脚を用いて敏速に走り,長い第1脚は歩行には用いず,触角役目を果たしている。ヨーロッパ,アフリカ,アメリカ,オーストラリア,タイ,インドなどに分布し,近年まで日本からは知られていなかったが,1971年に石垣島で発見された。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コヨリムシ」の意味・わかりやすい解説

コヨリムシ
こよりむし / 紙縒虫

節足動物門クモ形綱鬚脚(しゅきゃく)目Palpigradiの陸生小動物。コヨリムシ科Eukoeniidaeに代表される原始的な微小クモ形類で、多くは白色。体長はもっとも大きい種で2.8ミリメートル、多くは2ミリメートルに満たない。分布は地中海沿岸、マダガスカル、北アメリカのテキサス州、カリフォルニア州、およびメキシコ、パラグアイチリ、オーストラリア、タイなどに限られており、日本付近からは未発見であったが、1971年(昭和46)に青木淳一(1935―2022)・安間繁樹(やすましげき)(1944― )により、ユーコエネニア属Eukoeneniaの1種が沖縄県石垣島で発見された。この科は数珠(じゅず)状(こより状と見立ててその名がついたようである)の長い尾があり、ヤイトムシ類の尾よりかなり長く、サソリモドキ類のような糸状でもない。無眼で鋏角(きょうかく)は大きい。触手はほとんど歩脚状で、5対の歩脚をもつようにみえるが、敏速に走るのはこの触手と第2脚から第4脚であり、第1脚は歩行には用いられず触角のような役目をしている。湿った暗い土壌中に生活し、小動物の卵などを食べているようである。

[森川国康]

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百科事典マイペディア 「コヨリムシ」の意味・わかりやすい解説

コヨリムシ

節足動物門蛛形(ちゅけい)綱コヨリムシ目の総称。体長0.5〜2mm。世界に約60種が知られる。日本では沖縄の石垣島で発見された1例だけが知られるが,種名確定にはいたっていない。

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