ゴンザレス(N. V. M. Gonzales)(読み)ごんざれす(英語表記)N. V. M. Gonzales

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ゴンザレス(N. V. M. Gonzales)
ごんざれす
N. V. M. Gonzales
(1917―1999)

フィリピンの英語作家。英語短編小説の名手といわれ、流麗で熟慮された文体と緻密(ちみつ)な描写を特徴とした。代表作として、マニラに出てから文壇登場までを描いた自伝的小説『四月の風』(1940)、幼少年期の体験を生かして故郷ミンドロ島の住民とその生活を描いた短編『七つの丘を越えて』(1947)、マニラやアメリカに住む中産階級フィリピン人の生活と葛藤(かっとう)を取り上げた『ミンドロ島の向うに』がある。一貫して、フィリピン・インテリアイデンティティ(主体性)の問題を扱い、それを確立できないのは、西欧教育から学んだ価値観が開発途上国の現実に即さないこと、および故郷の喪失に起因すると示唆した。その問題を提示したのが長編『恵みの時』(1956)、『竹の踊り子』(1959)である。国立フィリピン大学で教鞭(きょうべん)をとった後はアメリカに在住した。

[山下美知子・菅家健一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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