日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゴンズイ(海水魚)」の意味・わかりやすい解説
ゴンズイ(海水魚)
ごんずい / 権瑞
striped catfish
[学] Plotosus japonicus
硬骨魚綱ナマズ目ゴンズイ科に属する海水魚。発音するので、地方によってググとかギギとかよぶこともある。房総(ぼうそう)半島以南の太平洋岸各地、能登(のと)半島、南西諸島に分布する。岸辺の浅い岩場や汽水域に生息する。体は細長く、20センチメートル余りになる。口ひげが4対で、背びれは小さく、尾びれの上部基底は背びれのすぐ後ろまで前進し、臀(しり)びれの基底が長く、尾びれにつながるのが特徴。体は暗褐色で、体側に頭から尾部にかけて2本の黄色の縦帯がある。肛門直後の泌尿生殖孔(せいしょくこう)から、柔らかい房状の突起物を出して塩類を排出する。
1尾の親魚は1400粒余りの卵をもち、5~8月に直径3.2ミリメートルの球形の沈性卵を、浅い円形の産卵床に産む。若魚は昼間はひとかたまりになって泳ぎ、ゴンズイ玉とよばれる。成魚は昼間は岩陰に群集し、夜間に分散して活動する。魚卵、イカ類、海藻の胞子などを食べる。ほかの魚に付着している寄生虫を食べる掃除魚としての行動も、観察されている。胸びれの棘(とげ)の基底部と肩帯の骨とをこすり合わせて特有な音を出す。背びれの最前の棘や胸びれの棘は鋭いうえ、毒腺(どくせん)がある。これに刺されると腫(は)れ上がり、激しく痛む。クスの木を焼いて、その煙でいぶすと腫れが引いて、痛みも消える。みそ汁やてんぷらにして食べるところもある。
日本産ゴンズイは1種とされていたが、2008年(平成20)にゴンズイとミナミゴンズイがいることが確認された。ミナミゴンズイは沖縄諸島から東アフリカまでの西太平洋、インド洋に広く分布する。従来ゴンズイとされていた種が新種Plotosus japonicusとして記載され、ミナミゴンズイに従来の学名Plotosus lineatusが適用された。ゴンズイは、尾びれ上部の起部と臀びれ起部の前後差が小さいこと、鰓耙(さいは)の数が多いこと、肛門直後から出ている突起物の先端が一層多分岐していること、ミナミゴンズイほど大きくならないことなどで区別できるが、色彩と斑紋(はんもん)では識別不可能である。
[落合 明・尼岡邦夫]