サラスバティー川(読み)サラスバティーがわ(英語表記)Saraswati

改訂新版 世界大百科事典 「サラスバティー川」の意味・わかりやすい解説

サラスバティー[川]
Sarasvatī

インド北西部,ヒマーチャル・プラデーシュ州南端のシルムル県のシワリク丘陵に発し,ハリヤーナー州北西境を南西流したのち,ガッガル川に合流してタール砂漠中に消失する。全長約330km。ヒンドゥー教徒の最も聖なる川の一つで,学問技芸の神サラスバティーはこの川に由来する。《リグ・ベーダ》にはアラビア海に流入する大河として描かれている。タール砂漠中に残るガッガル川などの干上がった旧河床は,かつての流路とされる。またこれら旧河床は,インダス川ガンガーガンジス)川との間の河川争奪のあとを示すという説もある。グジャラート州中西部にも小カッチ湿地に流入する同名の河川があり,ヒンドゥー教徒の聖なる巡礼地となっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「サラスバティー川」の意味・わかりやすい解説

サラスバティー川
サラスバティーがわ
Saraswati

インド北西部,パンジャブ州南部を流れる川。ヒマチャルプラデーシュ州との境界付近に発し,南西に流れてラージャスターン州との州境付近のタール砂漠周縁部で消滅する。同じく砂漠に没する南方のガーガル川と運河で結ばれる。古代インドの聖典『リグ・ベーダ』のなかでは,女神サラスバティーと同一視され,しばしば神聖な川として登場し,現在よりも流量の大きな川であったことが示されている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のサラスバティー川の言及

【川】より

… インドとイランでは川は女神と見なされた。古くは特に,インドではサラスバティー,イランではアナーヒターと呼ばれた神話的聖河が,大女神として崇拝された。後代のヒンドゥー教の信仰の中で最大の位置を占める聖河はガンガーだが,神話によればガンガーという名のこの川の女神は,もとは大神ビシュヌのかかとから流れ出て天界にいたが,あるときバギーラタという王が行った非常な苦行の功徳によって地上に下ることを余儀なくされた。…

※「サラスバティー川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android