サルト(民族)(読み)さると(英語表記)Sart

日本大百科全書(ニッポニカ) 「サルト(民族)」の意味・わかりやすい解説

サルト(民族)
さると
Sart

中央アジアのウズベキスタン共和国を中心に、タジキスタンカザフスタンの各共和国に住む、人種的・文化的にはイラン系のタジク人とトルコ系のウズベク人の混合民族。サルトの住むステップ地帯は歴史的にもコーカソイドモンゴロイド混血の場であり、サルトはその典型例であるといえる。もともとサルトという民族は存在せず、征服者として後からきたロシア人が、この地方の人々を民族単位ではなく生業で区分し、遊牧民に対してオアシスを中心に定住している人々をサルトとよんだことに始まる。つまり、イラン系、トルコ系を含むオアシス定住民をさすことばであり、民族用語としては意味がなく現在では一般には用いられない。形質的には中背、短頭で、髪は黒、皮膚および目の色は濃い褐色であることなど、モンゴル的特質が顕著にみられる。伝統的に男女の区分が厳しく、居室や食事も別で、女性は外出時には黒いベールをまとい、年をとると歯を黒く染める慣習があった。男は頭を剃(そ)りひげを蓄えるため床屋が多く、その床屋たちがかつては外科医としての役割を果たしていた。宗教はスンニー派イスラム教で、いまでも内婚率は9割以上ときわめて高い。

[片多 順]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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