日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
サンチェス(Florencio Sánchez)
さんちぇす
Florencio Sánchez
(1875―1910)
ウルグアイの劇作家。1903年にブエノス・アイレスに移り、ボヘミアンの生活を送りながら新聞に寄稿。09年ウルグアイ政府使節の一員として渡欧し、帰国後はブエノス・アイレスで演劇に専念。ヨーロッパを代表する劇作家イプセンらの作劇法を駆使してアルゼンチンの社会問題にくさびを打ち込み、ラテンアメリカ演劇界に大きな足跡を残した。『わが息子は博士』(1903)、『移民の娘(グリンガ)』(1904)、アルゼンチン版『リア王』ともいうべき『下り坂』(1905)など、農村を舞台にし、牧童(ガウチョ)をはじめとする土着民と移民の倫理感の対立、善と悪の闘いを主題にしたものに傑作が多い。彼の死によりガウチョ文学は幕を下ろす。
[安藤哲行]