日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
サン・シモン(Louis de Rouvroy, duc de Saint-Simon)
さんしもん
Louis de Rouvroy, duc de Saint-Simon
(1675―1755)
フランスの作家、政治家。封建大貴族として誇り高く、大きな政治的役割を演じようとの野望を抱いていたが、ブルゴーニュ公の死によって望みを断たれ(1712)、友人であった摂政(せっしょう)オルレアン公フィリップの死後、「素町人の長い治世」を憎んでラ・フェルテ城に隠棲(いんせい)し、著述に没頭した。なかんずく有名な『回想録』は1694年から1752年にかけて書き続けられたもので(ただし公刊は死後)、ルイ14世の治世の末年と摂政時代(1694~1723)とについての貴重な証言である。その情報的価値の高さもさることながら、無数の廷臣たちの人間像を愛憎の赴くままに活写した筆力のたくましさは、彼をしてフランス文学史上最大の散文作家の一人たらしめている。1983年、この『回想録』の新版(全8巻)がプレイアード叢書(そうしょ)に入って彼の名声はいっそう高まった。
[大塚幸男]