ザゼンソウ(読み)ざぜんそう

改訂新版 世界大百科事典 「ザゼンソウ」の意味・わかりやすい解説

ザゼンソウ (座禅草)
Symplocarpus foetidus Nutt.var.latissimus(Makino)Hara

雪どけとともに暗紫褐色の仏焰苞(ぶつえんほう)につつまれた花を開くサトイモ科多年草根茎は太く,頂部から葉を根生する。葉は葉柄と円心形の大きな葉身からなるが,他のサトイモ科植物に多く見られる葉鞘(ようしよう)部は分化していない。春の萌芽の時期に卵形の仏焰苞につつまれた楕円形肉穂花序を出し,色は通常暗紫褐色であるが,ときに緑色のものもある。花は両性花で4枚の花被片と4本のおしべを有し,子房は1室で1個の胚珠をいれる。種子は大きく,無胚乳で秋に熟す。本州,北海道からアムール川流域に分布し,ときに群落を形成するが,ミズバショウほどではない。北アメリカのものは悪臭があることで有名で英名skunk cabbageというが,日本産のものはそれほどひどくはない。根茎や若芽はブタのえさにされる。また北アメリカではインディアン食用に利用していたことがある。

 よく似たヒメザゼンソウS.nipponicus Makinoは葉が狭卵形で,花期は初夏で,果実は翌年の開花期の前後に熟す。日本と朝鮮に分布する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ザゼンソウ」の意味・わかりやすい解説

ザゼンソウ
ざぜんそう / 坐禅草
[学] Symplocarpus renifolius Schott ex Tzvelev
Symplocarpus foetidus Nutt. var. latissimus (Makino) Hara

サトイモ科(APG分類:サトイモ科)の多年草。地下に太い根茎があり、全草に悪臭がある。葉は根生し、長柄があり、葉身は円心形で大きく、成熟時には径40センチメートルに達する。花序楕円(だえん)の肉穂花序をなし、長さ2センチメートル、舟形の厚い仏炎包(ぶつえんほう)に包まれる。花は両性で、4枚の花被片と4本の雄しべ、1本の雌しべからなり、密集してつく。仏炎包は3~5月、葉が出る前に展開し、成熟時には長さ20センチメートル、径13センチメートルに達し、内側は呼吸熱により、外気温より著しく高温に保たれる。種子は果皮に包まれず、スポンジ状の花軸の中に埋まる。水湿地に生え、中部地方以北の本州、北海道、朝鮮半島、樺太(からふと)(サハリン)、ウスリー、アムールに分布。名は、花序のようすが坐禅をしている状態を思わせるのでいう。

[邑田 仁 2022年1月21日]


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百科事典マイペディア 「ザゼンソウ」の意味・わかりやすい解説

ザゼンソウ

本州,北海道,アジア北東部の湿地にはえるサトイモ科の多年草。全体に不快な臭気がある。根茎は太く,葉は根出し,卵状心臓形で,長さ20〜30cm。4〜5月,紫褐色の卵形の仏炎包の中に,楕円形の肉穂花序をつける。花は両性。花被片4個,おしべ4本,めしべ1本。花序と仏炎包の形が,僧が座禅をしているように見え,この名がある。

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