シェリング(読み)しぇりんぐ(英語表記)Friedrich Wilhelm Joseph Schelling

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

シェリング(Friedrich Wilhelm Joseph Schelling)
しぇりんぐ
Friedrich Wilhelm Joseph Schelling
(1775―1854)

ドイツ観念論を展開した哲学者の一人。[高山 守]

生涯と思想的発展

1775年1月27日、ドイツ、ウュルテンベルク地方のレオンベルクに生まれる。きわめて早い時期から天賦の才を発揮し、1790年15歳の若さでチュービンゲン大学に入学する。ここで5歳年長のヘルダーリンおよびヘーゲルと親交を結ぶ。早くから哲学研究に携わり、フィヒテの哲学をいちはやく摂取して『哲学の原理としての自我について』Vom Ich als Prinzip der Philosophie(1795)等を執筆・出版する。やがて1798年に出版された『世界霊について』Von der Weltseele等において、独自の哲学構築の第一歩であるいわゆる「自然哲学」を展開する。これがフィヒテ、ゲーテらに高く評価され、23歳でイエナ大学員外教授となる。イエナにおいて、「自然哲学」を体系的に補完する著作『超越論的観念論の体系』(1800)を公刊。翌1801年、この体系と「自然哲学」とを統合した独自の哲学、「同一哲学」を『わが哲学体系の叙述』Darstellung meines Systems der Philosophieにおいて発表、絶頂期を迎える。
 1803年、親友W・シュレーゲルの夫人カロリーネKaroline(1763―1809)との結婚問題などから、シェリングは、ロマン派と結び付いた華々しい活躍の舞台であったイエナを去り、ウュルツブルク大学の教授の職につく。翌1804年『哲学と宗教』Philosophie und Religionを公刊。1806年ミュンヘンに移居、学士院会員となる。このころを境にシェリングの哲学は濃い神秘の影を帯び始め、いわゆる後期思想へと移行する。1807年、彼を痛烈に批判したヘーゲルの『精神現象学』の出版を契機にヘーゲルとの親交を断つ。1809年『人間的自由の本質』を公刊。1820年よりエルランゲン大学教授、1827年ミュンヘン大学が創設され、同大学教授に就任、同年学士院院長となる。1840年、ヘーゲル死後のベルリン大学に招かれ、ここでかねてよりの構想である「積極哲学」を展開する。1854年8月20日、スイスのラガツにて死去した。[高山 守]

中心思想

シェリングの哲学を一貫して規定したのは、彼の初期の思想「自然哲学」である。彼によれば自然とは、けっして近代自然科学がとらえるような機械的な作用や反作用が支配する物質の世界ではなく、一つの生命、霊魂であり、「見ることのできる精神そのもの」である。「自然哲学」は、この豊饒(ほうじょう)な生命ある大自然を、「重力」と「光」という2原理よりなる無限な「絶対者」の開示として把握するのである。前期思想の頂点をなす「同一哲学」も、新たにとらえ直された「絶対者」を根源において展開される「自然哲学」である。つまり「同一哲学」は、「絶対者」を「同一律(A=A)」の形式において存在する「理性」ととらえ、「光」を認識の原理、「重力」を存在の原理と規定することによって、大自然が確固たる「絶対者」「理性」の自己認識であることを明確にする。後期思想は、それまで人間ももっぱら自然と一体のものと説かれていたのに対して、両者の乖離(かいり)を主題化する。人間とは、神的秩序である自然から離反しうる自由をもつ者、否、この「自由」そのものである。ここに、「自然哲学」がキリスト教における救済史をも包摂することによって、「積極哲学」が成立する。ヘーゲル哲学への批判を含む「積極哲学」とは、いっさいが神そのものである世界において、なにゆえに神からの離反、悪が存在するのかという問いを契機に、「存在する」ということ自体の根拠を問う学である。シェリングは、現代の実存哲学を先取りするこの「積極哲学」を、『神話の哲学』Philosophie der Mythologie、『啓示の哲学』Philosophie der Offenbarungとして壮大な視野のもとで論じたのである。[高山 守]
『赤松元通訳『先験的観念論の体系』(1948・蒼樹社) ▽山本清幸訳『哲学的経験論』(1973・ミネルヴァ書房) ▽細谷貞雄訳『近世哲学史講義』(1974・福村出版) ▽岩崎武雄・渡辺二郎他訳『世界の名著43 フィヒテ・シェリング』(1980・中央公論社) ▽西谷啓治訳『人間的自由の本質』(岩波文庫) ▽勝田守一訳『学問論』(岩波文庫) ▽服部英二郎・井上庄七訳『ブルーノ』(岩波文庫)』

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