改訂新版 世界大百科事典 「シュウ(蓚)酸鉄」の意味・わかりやすい解説
シュウ(蓚)酸鉄 (しゅうさんてつ)
iron oxalate
酸化数ⅡおよびⅢの鉄のシュウ酸塩が知られている。
シュウ酸鉄(Ⅱ)
化学式FeC2O4・2H2O。天然にフンボルチンとして産する。鉄をシュウ酸に溶かすか,鉄(Ⅱ)塩水溶液にシュウ酸あるいはシュウ酸アルカリ水溶液を加えると得られる。淡黄色結晶性粉末。斜方晶系。比重2.28。空気中で加熱すると150~160℃で分解し,無水和物は得られない。水に難溶。希無機酸およびシュウ酸アルカリ水溶液に可溶。サングラスの着色剤(緑褐色),顔料等に用いられる。
シュウ酸鉄(Ⅲ)
化学式Fe2(C2O4)3・5H2O。硝酸鉄(Ⅲ)とシュウ酸を65%硝酸に溶かし,濃硫酸上で蒸発させると得られる。黄色結晶性粉末。光により分解して緑色となる。水に溶けて黄色溶液となり,徐々に分解してシュウ酸鉄(Ⅱ)となる。シュウ酸カリウム水溶液に溶けてトリスオキサラト鉄(Ⅲ)酸カリウムK3[Fe(C2O4)3]となるが,これは波長254~390nmにおける化学光量計として用いられる。
執筆者:近藤 幸夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報