シュルツ(Theodore William Schultz)(読み)しゅるつ(英語表記)Theodore William Schultz

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

シュルツ(Theodore William Schultz)
しゅるつ
Theodore William Schultz
(1902―1998)

アメリカの経済学者。M・フリードマンとともにシカゴ学派の指導者として活躍。サウス・ダコタ州アーリントンに生まれる。サウス・ダコタ州立大学を卒業後、ウィスコンシン大学大学院に進み、1930年農業経済学の博士号を取得した。同年アイオワ州立大学で教職についたが、1943年同僚の論文の削除問題がおき、これに抗議して辞職した。その後シカゴ大学に移り、1946年から1972年まで教授を務め、1972年に名誉教授となった。その間、農務省、商務省の顧問、国連開発途上国調査委員などを務め、1960年にはアメリカ経済学会会長に就任した。

 農業を経済の重要な一分野として位置づけ、国民経済全体を視野に入れた枠組みのなかで分析した。初期の研究はアメリカ国内の農業問題であったが、やがて世界的農業問題に関心を広げた。開発途上国の経済発展と農業の関係を研究していくなかで、経済成長の要因として、資本ストックのうちでも人的資源が大きく貢献することに注目し、これを人的資本human capitalと名づけた。人的資本は教育投資によって増大し、経済発展に結び付くと主張し、教育や職業訓練への投資の重要性を強調した。1979年に「とくに開発途上国問題の考察を通じた経済発展の先駆的研究」に対して、ノーベル経済学賞がW・A・ルイスとともに与えられた。なお、彼の「人的資本の理論」は門下生のG・S・ベッカーにより、さらに発展した。

[金子邦彦]

『T・W・シュルツ著、逸見謙三訳『農業近代化の理論』(1969・東京大学出版会)』『T・W・シュルツ著、川野重任監訳『経済成長と農業』(1971・農政調査委員会)』『T・W・シュルツ著、土屋圭造監訳『貧困の経済学』(1981・東洋経済新報社)』『T・W・シュルツ著、伊藤長正他訳『「人間資本」の経済学』(1985・日本経済新聞社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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