シラコバト(読み)しらこばと(英語表記)collared turtle dove

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シラコバト」の意味・わかりやすい解説

シラコバト
Streptopelia decaocto; Eurasian collared dove

ハト目ハト科全長 30~33cm。全身クリーム色がかった灰褐色で,後頸に黒色の横帯がある。尾羽の基部が黒い。人家近くの疎林や農耕地すみ,「くっ,くっくー」と鳴く。元来は南アジアに分布していたが,20世紀の終わりまでにはヨーロッパ中に広がり,中国北アフリカイギリスロシアウラル山脈東部などにも及んでいる。北アメリカではバハマなどに移入された鳥がフロリダ半島などに広がり,さらに分布を広げている。日本では,江戸時代に鷹狩用に放鳥され,関東平野にすみついたといわれている。1948年には 30つがいまで減少し,埼玉県越谷市付近で見られるだけになったが,今日では数が増え,埼玉県,栃木県,茨城県,千葉県に繁殖分布を広げている。1956年に国の天然記念物に指定された。

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改訂新版 世界大百科事典 「シラコバト」の意味・わかりやすい解説

シラコバト (白子鳩)
collard turtle dove
Streptopelia decaocto

ハト目ハト科の鳥。ヨーロッパからインド,中国,朝鮮半島まで分布している。日本では関東平野の埼玉県を中心に茨城県,栃木県,千葉県,東京都の一部に限って生息する。〈越谷のシラコバト〉として国の天然記念物で,埼玉県の県鳥。全長約33cm。全身淡い灰褐色で,後頸(こうけい)によく目だつ黒帯がある。尾は両側が白く,下から見ると先のほう半分ほどが白い。くちばしは黒く,脚は赤い。ポーポーポポーと静かなおとなしい声で鳴く。農耕地や屋敷林などが散在する場所にすみ,樹上小枝を集めて皿形の巣をつくる。卵は白色で1腹2個,抱卵期間は14~16日。最近は人工建築物に営巣する例も知られている。植物の果実種子など,おもに植物を食べる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シラコバト」の意味・わかりやすい解説

シラコバト
しらこばと / 白子鳩
collared turtle dove
[学] Streptopelia decaocto

鳥綱ハト目ハト科の鳥。東は日本、中国から、西はイギリスも含めてヨーロッパ全土まで、広く分布している。もともとは、中央アジア、それに中近東からミャンマービルマ)にかけて分布していたらしいが、人間の東西の交流が盛んになるにつれて、分布が拡大した。アジア産のキジバト、ヨーロッパ産のコキジバトと同じように耕地や村落に多く、地上で草の種子や木の実を食べる習性があり、人家近くのこぼれた穀物を食べることによって分布が拡大したと思われる。ヨーロッパでは1920年代以降、北西へ分布を広げ数も増えたが、日本では江戸時代に鷹狩(たかがり)用の猛禽(もうきん)の餌(えさ)として輸入されたものが野生化したと推定される系統が、埼玉県越谷(こしがや)市を中心にすんでいるだけであり、国の天然記念物に指定されて保護されている。全長約27センチメートル、全身灰色であるが、風切(かざきり)と尾の基部が黒い。樹上に巣をつくり、2卵を産む。気候がよければ、3月から9月過ぎまで何度も繁殖する。

[竹下信雄]

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百科事典マイペディア 「シラコバト」の意味・わかりやすい解説

シラコバト

ハト科の鳥。翼長17cm。全体淡灰褐色で後頸の黒色の斑紋が目立つ。ユーラシア大陸および北アフリカに分布するが局地的。日本へは移入されたものらしく,埼玉から千葉,茨城,栃木にかけて少数繁殖するだけで,天然記念物に指定され,また埼玉県の県鳥とされている。農家付近の林を営巣および休息の場所とし,農耕地で主として植物質の餌をあさる。ヨーロッパでは近年繁殖地が広がっており,日本では一時期,減少したが,近年増加しつつある。絶滅危惧IB類(環境省第4次レッドリスト)。
→関連項目越谷[市]ハト(鳩)

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世界大百科事典(旧版)内のシラコバトの言及

【ハト(鳩)】より

…カンムリバト亜科はニューギニア地方特産で,カンムリバト属Gouraの3種だけからなり,オオハシバト亜科はサモア島特産のオオハシバト1種だけを含む。 日本にはカラスバトColumba janthina,リュウキュウカラスバトC.jouyi,オガサワラカラスバトC.versicolorシラコバトStreptopelia decaocto(イラスト),ベニバトS.tranquebaricaキジバトS.orientalis(イラスト),キンバトChalcophaps indica,アオバトSphenurus sieboldii,ズアカアオバトS.formosaeの9種が分布するが,小笠原諸島特産のオガサワラカラスバトと琉球諸島特産のリュウキュウカラスバトは絶滅した。これらによく似たカラスバトは伊豆諸島や西南日本の離島に分布し,全身光沢を帯びた紫黒色の大型のハトである。…

※「シラコバト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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