ジャム(Francis Jammes)(読み)じゃむ(英語表記)Francis Jammes

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ジャム(Francis Jammes)
じゃむ
Francis Jammes
(1868―1938)

フランスの詩人ピレネーのベアルン地方に生まれ、田園の風物と素朴な人々の心情を歌った。1897年、当時衰退をたどっていた象徴主義とその人工楽園的美学に対し「ジャミスム」を宣言し、詩作品の清純を保つためには真実の謳歌(おうか)と、「小鳥や花や羊の群れや、男や女や陽気さや寂しさ」など自然感情のありのままの描写を主張。詩集『暁(あけ)のお告げの鐘(アンジェラス)から夕のお告げの鐘(アンジェラス)まで』(1898)、『桜草の喪』(1900)などで、ニーチェ的超人哲学を否定し、村の教会を中心とする農民の単純な愛の生活を自由な形式で歌い、宗教観を可憐(かれん)なロバに託す。1905年クローデルの導きでカトリックに回心。詩集『空の晴れ間』(1906)では霊的苦悩の終わりと信仰復帰の道程を示した。『キリスト教農事詩』(1911~12)や『四行詩』(1925)は彼の詩魂と宗教感情の集大成である。ほかに短編集『野うさぎ物語』(1903)や自伝的随筆『愛・詩神・狩り』(1922)など。ジャムは、批評家ルネ・ラルーの指摘するように、二重意味で優雅(グラース)と恩寵(グラース)の詩人であり、「自然と恩寵(おんちょう)とを和解させた詩人」(モーリヤック)であるといえよう。

倉田 清]

『倉田清訳『ジャム詩集』(1980・朝日出版社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android