ジュウシマツ(読み)じゅうしまつ(英語表記)bengalee

改訂新版 世界大百科事典 「ジュウシマツ」の意味・わかりやすい解説

ジュウシマツ (十姉妹)
common bengalese
common finch
Lonchura striata var.domestica

スズメ目カエデチョウ科の鳥。コシジロキンパラL.striata(英名white-rumped munia)の飼育改良による変種とされ,江戸時代に日本でつくられたといわれている。全長約11cm,スズメより小さい。原種のコシジロキンパラはキンパラに似た鳥で,背面は黒褐色,腹と腰が白く,これが飛ぶときによく目だつ。尾は黒い。山地や低地の林,林縁や二次林にすみ,台湾,中国南部,インドからマレー半島およびスマトラ島まで分布している。非繁殖期には群れで過ごし,竹林や空地の草むらで種子をとって食べている。ときに大群をつくって水田を訪れ,イネに大害を与えることがある。日本では冬の沖縄に大群で現れることがあり,二次的に生えたイネやサトウキビの種子に集まる。1夫1妻で繁殖し,低木茂みの中に球状の巣をつくり,1腹6~7個の卵を産む。この巣には横にチューブのついた入口がある。

 ジュウシマツは,このコシジロキンパラと近縁種との交雑により中国で生じ,中国で飼われていたものが江戸時代に日本へ輸入され,今日のジュウシマツに改良されたともいわれる。ごくふつうのジュウシマツは,白色黒色と茶色のぶちで,その配色がさまざまに変化する。純白のものをシロジュウシマツ,褐色のものをショウジョウジュウシマツ,白い地に明るい茶色と黒色の大斑が現れるものをミケジュウシマツ,頭部の羽毛が巻きあがっているものをボンテンジュウシマツ,胸や背の羽毛が巻きあがっているものをダイナゴンジュウシマツと呼んでいる。じょうぶで,粗食に耐えられるので飼いやすく,巣引も簡単である。1巣に7~8卵を産み,禽舎(きんしや)の中でよく増えるので,人気のある飼鳥で,初心者が飼うのに向いている。他のカエデチョウ科の鳥やハタオリドリ科の鳥でむずかしい飼鳥の卵を親に代わって抱卵し,じょうずに雛を育てるので,高級フィンチ類の仮親としても重要。ヒエをもっとも好み,これにアワ,キビを混ぜて飼う。巣引には発情飼料と巣材を与える。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジュウシマツ」の意味・わかりやすい解説

ジュウシマツ
じゅうしまつ / 十姉妹
bengalee
[学] Lonchura striata var. domestica

鳥綱スズメ目カエデチョウ科の鳥。古く中国方面から輸入され日本で改良された品種である。原種は明らかでないが、インド、東南アジアに広く分布しているコシジロキンパラであるとされている。またこのコシジロキンパラに、インド、ヒマラヤ一帯に分布するギンバシL. malabaricaを交配したものがジュウシマツの原型になったともいわれる。全長約13センチメートル。一般に鳥は人為的に飼育されると羽色が変化しやすく、繁殖容易なものほど変化が速い。ジュウシマツは日本には江戸時代に中国から輸入され、年を経るにつれて羽色の変化が目だち、褐色系が現れた。その後、羽色は暗褐色を主色とするが実にさまざまの品種が作出され、飼鳥家の間ではそれぞれに名がつけられている。普通の品種は暗褐色と白との雑色で、ナミジュウシマツ(並十姉妹)とよぶ。褐色系の羽色にはチャジュウシ、クロジュウシ、ショウジョウジュウシなどがある。全身白色のものは昭和初年に固定されてシロジュウシ(白十姉)、その背面に褐色小斑(しょうはん)のあるものをコブチ(小斑)、頭上の羽毛が巻き羽になっているのをボンテンジュウシ(梵天十姉)、巻き羽が胸にあるのをチヨダなどという。また巻き羽の生ずる位置によってダイナゴン、チュウナゴンなどと名づけられ、巻き羽のあるものを総称して芸ものジュウシマツとよぶなどがその一例で、実に多彩である。おとなしい鳥で、群居させても仲がよいので十姉妹とよばれ、飼育も容易である。一般には庭箱に壺(つぼ)巣を入れて飼う。餌(えさ)はヒエ、アワ、キビを混ぜた撒き餌(まきえ)のほか、青菜、ボレイ(牡蠣)粉、水などを与える。また、ジュウシマツは抱卵、育雛(いくすう)にも長じているので、種々の飼い鳥の母鳥として重宝がられている。

[坂根 干]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジュウシマツ」の意味・わかりやすい解説

ジュウシマツ
Lonchura striata domestica; Bengalese finch; society finch

スズメ目カエデチョウ科。全長 10cm。家禽化された最も大衆的な飼鳥の一つで,野生種としては存在しない。起源についてはいくつかの説があったが,遺伝子の研究から,インド,中国,東南アジアにかけて広く分布するコシジロキンパラ L.striata が原種とされている。羽色,形ともにいろいろと改良され,多くの品種がある。日本には 18世紀の初め頃,飼鳥として中国から入ってきたといわれる。

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