日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ジュノー(Marcel Junod)
じゅのー
Marcel Junod
(1904―1961)
スイス人医師、赤十字活動家。1935年ジュネーブ大学で外科のインターンをしていたとき、赤十字の要請で派遣員となり、イタリア侵攻下のエチオピアに赴く。以後スペイン内戦、第二次世界大戦下のヨーロッパで捕虜の保護、市民の救護にあたる。1944年赤十字国際委員会駐日代表に任命され、翌1945年(昭和20)6月ジュネーブをたって戦火を避けながら8月9日羽田に飛来。日本降伏後ただちに連合軍捕虜3万4000人の解放に奔走する一方、9月2日広島の惨状を伝える電文を入手するとマッカーサーを説得、9月8日15トンの医薬品を岩国へ空輸、翌9日午前広島市に入り医薬品の分配と医療に従事し多数の市民を救う。1946年2月ジュネーブの赤十字本部に帰着するとただちに米軍の原爆投下を糾弾するアピールを発した。同年末ユニセフ代表、1953年赤十字復帰、1959年赤十字国際委員会副委員長、同年8月北朝鮮帰還問題で再来日。1961年6月16日スイスにて没した。
[丸山幹正]
『マルセル・ジュノー著、丸山幹正訳『ドクター・ジュノーの戦い――エチオピアの毒ガスからヒロシマの原爆まで』(1981/増補版・1991・勁草書房)』