スエズ(英語表記)Suez

翻訳|Suez

精選版 日本国語大辞典 「スエズ」の意味・読み・例文・類語

スエズ

(Suez) エジプト北東部、スエズ運河南端にある港湾都市。紅海に面し、古代から紅海とナイル川流域を結ぶ交通の要地として開けた。ポートサイドカイロとは鉄道、道路で連絡され、工業都市として発展。

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改訂新版 世界大百科事典 「スエズ」の意味・わかりやすい解説

スエズ
Suez

エジプト北東部の都市。同名県の主都で,アラビア語ではスワイスal-Suways人口41万7527(1996)。スエズ運河の紅海側の出口にあたり,同じく運河に沿うポート・サイドやイスマイリアと並ぶ商業都市として繁栄している。イブラーヒーム港タウフィーク港という二つの港は船舶の出入りが活発である。首都カイロとは鉄道,道路で結ばれ,現在は製油所,化学工場などが建てられ重工業が発達している。

 古代から地中海と紅海を結ぶ航海ルートの重要性は注目され,ナイル川を経由して二つの海を結ぼうという運河建設の試みは何度も行われ,古代エジプト時代の記録にも残っている。第26王朝(前663-前525)のネコ2世の時代にはデルタ地帯のナイル川支流に面したブバスティスの町から紅海までの運河建設が計画され,その後アケメネス朝ペルシアダレイオス1世が完成させ,現在でもその運河跡が残っている。ローマ時代にも改修工事が行われて使用されていたが,やがて土砂の堆積によって荒廃してしまった。642年アラブ・イスラム軍の将,アムル・ブン・アルアースがフスタート(現,カイロ)の町を築いたとき,この運河を再開発してフスタートと紅海を結ぶ〈信徒の長の運河(エジプト運河)〉を建設した。スエズ近郊1.6kmに位置するクルズムal-Qulzumは,この運河の起点として古くから知られていた。スエズの発展は何よりもスエズ運河開通によるもので,1859年運河工事が開始されると小さな漁村にすぎなかったスエズは人口が急増し,69年の運河開通後は重要な港として一躍発展を遂げ現在にいたっている。市街は碁盤の目状に区画整理され,ヨーロッパ風の建物が美しい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スエズ」の意味・わかりやすい解説

スエズ
すえず
Suez

エジプト北東部の港湾都市。スエズ運河南端、紅海側入口に位置する。人口41万7527(1996)。古くから紅海と地中海やナイル地方とを結ぶ要地として栄え、7世紀以降はメッカへの巡礼団の出航地ともなった。喜望峰航路の発展で一時衰えたが、19世紀イギリスがここをインド貿易の拠点としてカイロと結ぶ鉄道を建設し、1869年スエズ運河の完成により港湾都市として発展した。近年スエズ湾沿岸や海底油田の開発で国産石油の集散地となり、火力発電所や石油精製、化学肥料、繊維などの工場建設が進み、工業都市として発展している。カイロへはパイプラインが通じている。市街は本土側と、運河建設の際の土砂で築かれた島にあるポート・タウフィクとからなり、両者は長さ2.7キロメートルの鉄道・道路の走る堤防で結ばれている。ポート・タウフィクの運河通りの展望台からスエズ運河が一望できる。古代からアラブ時代までの遺物を所蔵する博物館がある。

[藤井宏志]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スエズ」の意味・わかりやすい解説

スエズ
Suez

アラビア名 al-Suways。エジプト北東部,スエズ湾の北にあり,スエズ運河南端に位置する港湾都市。ポートイブラヒームとポートタウフィークの2港をもつ。古代,中世にはスエズは重要な商業港であり,オスマン帝国領時代には海軍基地として知られていた。その後,スエズ運河開通にいたるまで等閑視されてきた。運河開通後脚光を浴びたが,1967年6月の中東戦争 (六日戦争) 後8年間運河が閉鎖された。工業には石油精製,化学肥料,衣料がある。カイロとは鉄道,道路で結ばれており,石油パイプラインが通じている。 80年北 17kmにスエズ運河の下を通るアフマッド・ハムディトンネル (1640m) が開通し,東西交通の大動脈となった。メッカ巡礼の出発地としても重要。人口 39万 2000 (1990推計) 。

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百科事典マイペディア 「スエズ」の意味・わかりやすい解説

スエズ

エジプトの北東部の都市。アラビア語でスワイス。スエズ運河の南端,紅海のスエズ湾に臨む。商業の中心地で,カイロ,ポート・サイドへ鉄道を通ずる。製油所,化学肥料工場がある。16世紀オスマン帝国の海軍,貿易の基地で,スエズ運河開通により発展。48万5000人(2006)。
→関連項目イギリス・エジプト条約

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