ステッキ

精選版 日本国語大辞典 「ステッキ」の意味・読み・例文・類語

ステッキ

〘名〙 (stick)
① 洋風の杖。
※開化自慢(1874)〈山口又市郎〉初「鳶合羽で洋角燈を提て、ステッキをついて出てくる」
② 印刷組版の植字工が使用する道具の一つ。鉄・真鍮(しんちゅう)・アルマイト・プラスチック製などの一種の箱で、植字工が一ページ大の版を組む際に、左手にこのステッキを持ち、手元適量ずつ組版し、ゲラに移していくのに用いる。〔舶来語便覧(1912)〕
③ =スティック
※朱と緑(1936)〈片岡鉄兵〉純情秘戯「化粧品売場で口紅のステッキを買ってゐた若い娘は」

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デジタル大辞泉 「ステッキ」の意味・読み・例文・類語

ステッキ(stick)

西洋ふうのつえ。
活版印刷の組版で、活字所定の長さに組み並べるのに使う小工具。
[類語]松葉杖つっかい棒ストックピッケル

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改訂新版 世界大百科事典 「ステッキ」の意味・わかりやすい解説

ステッキ

英語stickのなまりで,洋風の杖をいう。ヘロドトスによれば,古代バビロニアですでに精巧な彫刻を施したステッキが用いられていた。中世には王や聖職者の表徴として,また市民の実用品として用いられた。17世紀から19世紀にかけて,イギリスではスナッフ・ボックスsnuff box(かぎタバコ入れ)とともに,紳士の最も重要なアクセサリーと考えられていた。とくに休日の散策や礼装には欠かせないものとされた。フランスでは女性の散歩のさいのアクセサリーとして流行した。19世紀には女性は長柄のパラソル男性は洋傘をステッキ兼用のアクセサリーとした。これらの風習は徐々に衰えながらも1960年代ごろまでつづいたが,70年代には完全に消滅した。日本では明治時代に輸入され,一時はかなりの普及をみた。

 ステッキの材料はトウ(籐),シタン(紫檀),コクタンサンザシなどが使われ,木目か節が少ないものほど上質とされた。デザイン的に特色があるのは握りの部分の形で,曲がったもの,直角に曲げたもの,ゴルフ・クラブの握りのような形,犬やライオンの頭部を模したものなどと変化は多い。変り型のステッキとしてシューティング・ステッキshooting stickと呼ばれるものがある。これは上部が開閉式になっていて,開くと小さな腰掛けになり,20世紀初期のスポーツ観戦には欠かせないものであった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステッキ」の意味・わかりやすい解説

ステッキ
すてっき
stick

杖(つえ)のこと。英語の発音スティックの訛(なま)り。歩行時に体のバランスをとるための実用的なもの、身分や位を表徴するもの、装飾的なものなどがある。材料としては、籐(とう)(ケーン)、トネリコ、竹、桜などが用いられる。

 すでに古代エジプトやオリエントの遺物のなかにみられ、王や神の尊厳や威光のシンボルとしても用いられた。中世においては、君主僧侶(そうりょ)の表徴として不可欠であった。貴婦人のアクセサリーとしては11世紀に出現し、18世紀には、ロココ調の細くて高いヒールの靴にあわせて全盛をみた。男性用籐杖(とうづえ)は16世紀からで、17世紀にはフランス紳士の重要なアクセサリーとなったが、ステッキの流行は19世紀の末までで、20世紀に入ると、実用的なもののみが残るに至った。

 日本では、古くは、先が二またになった鹿(かせ)杖と、撞木(しゅもく)のような形をした、T字形の横首杖(撞木杖)があった。また竹の撞木杖の頭に鳩(はと)形のものをつけた、宮中から長寿者に贈られる鳩杖(はとのつえ)があった。このほか、刑具(笞(ち)、杖(じょう)の罰用)、仏具(錫杖(しゃくじょう)や金剛杖)、祭具(卯杖(うづえ))、武器(仕込杖)などとして用いられてきたが、近世では杖は外出時のアクセサリーとなり、1887年(明治20)ころより洋杖にとってかわられた。

[田村芳子]

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百科事典マイペディア 「ステッキ」の意味・わかりやすい解説

ステッキ

洋風の(つえ)。アクセサリーとしては16世紀ごろから男性が用い,18世紀には男女とも愛用,日本でも明治半ばごろ流行した。材料はシタン(紫檀),トウ(籐),根竹などで,柄に象牙,スイギュウの角,貴金属等をつけたり,彫刻をほどこしたりする。

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