ステノ(読み)すての(英語表記)Nicolaus Steno

精選版 日本国語大辞典 「ステノ」の意味・読み・例文・類語

ステノ

(Nicolaus Steno ニコラウス━) デンマーク解剖学者、地質学者、神学者。本名ニールス=ステンセン。サメの歯の化石から地層累重の法則発見、また、水晶結晶から両角一定の法則を見いだすなど、近代地質学の基礎を築いた。(一六三八‐八七

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ステノ」の意味・わかりやすい解説

ステノ
すての
Nicolaus Steno
(1638―1687)

デンマークの解剖学者、地質学者、神学者。ステノはラテン語名であり、デンマーク語ではステンセンNiels Stensen。コペンハーゲンに生まれ、コペンハーゲン大学で医学を学び、1659年アムステルダムに遊学したのち、ライデン大学で学位を得た(1664)。1662年解剖学の研究の成果として唾液(だえき)管(ステノ管)を発見してこれを記載した。涙腺(るいせん)の構造・機能にも精通していたほか、筋肉についても研究し、心臓が筋肉よりなっていることを初めて確かめた。1665年イタリアに行き、フィレンツェでフェルディナント2世の侍医となり、1667年にカトリック教に改宗した。さらに同地でサメに関する研究を行い、サメの歯の比較研究から地質学の研究へと進み、1669年地質学における地層累重の法則の基礎となる事実を発見して近代地質学の端緒をつくった。1672年帰国してコペンハーゲン大学解剖学教授となったが、宗教的理由からドイツに移り、1675年司祭となり、1677年「ティティオポリスの僧」の称を与えられ、その後は北ドイツとスカンジナビアの司教代理としてドイツに住んだ。

[大鳥蘭三郎]

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改訂新版 世界大百科事典 「ステノ」の意味・わかりやすい解説

ステノ
Nicolaus Steno
生没年:1638-86

デンマーク生れの解剖学者,地質学者,鉱物学者で神学者。コペンハーゲンの金細工師の家に生まれた。デンマーク語の名はステンセンNiels Stensenで,〈ステノ〉は,当時の知識人の習慣でラテン語化したもの。コペンハーゲン大学で医学を学び,オランダのライデン大学で学位を得る。フランス,ドイツ,イタリアにも学び,解剖学上の業績で知られた。1664年フィレンツェの宮廷に招かれ,以後2,3年ごとにデンマークと往復して宮廷医師として勤めた。66年サメの頭骨を解剖して,当時その形から舌石glossopetra(天狗のつめ)と呼ばれていたものがサメの歯の化石であることを知り,古生物学,地質学に進む。69年《固体の中に自然に包まれている固体について》を発表,地層の形成を論じ,層位学の基礎である〈地層累重の法則〉を説き,またトスカナ地方の地層と地形の発達を6段階にまとめた。水晶の結晶についても述べ,〈面角一定の法則〉を明らかにした。その後は,すでに改宗していたカトリックの宗教家として,主としてイタリアとドイツで活躍し,自然科学の研究からは遠ざかった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ステノ」の意味・わかりやすい解説

ステノ
Steno, Nicolaus

[生]1638.1.10. コペンハーゲン
[没]1686.11.26. シュベーリン
デンマークの地質学者,解剖学者。デンマーク名 Niels Stensen。アムステルダムで解剖学を修めた (1660) のち,フィレンツェのトスカナ大公フェルディナンド2世の侍医となる (1665) 。その間イタリア全土を広く旅行し,地質学的研究を行なう。その後は聖職者として活躍。地質学上の業績としては地層累重理論,地層の非連続性,不整合といった層位学的原理,地層に含まれる化石の地史学上の意義を明らかにするとともに,造山活動や岩石生成の理論,結晶学にも優れた成果をあげた。解剖学においては,哺乳類の唾液腺の一つ耳下腺から発する排出管 (ステノ管) の発見のほかに,卵胞の発見 (1672) が特に有名である。

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百科事典マイペディア 「ステノ」の意味・わかりやすい解説

ステノ

本名Niels Stensen。デンマークの地質学者,解剖学者,神学者。コペンハーゲン生れ。アムステルダム,ライデン,パリなどで医学を修め解剖学を専攻,1665年からイタリアのトスカナ大公フェルディナント2世の侍医。地質学の根本法則である地層累重の法則を明らかにし,1669年結晶の面角一定の法則に相当する事実を発見した。

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世界大百科事典(旧版)内のステノの言及

【結晶学】より

…したがって,現在では結晶のもつ対称の種々の様相を数学的な手法によって研究する分野が結晶学とよばれている。 結晶が自然科学の研究対象となり始めたのは17世紀中ごろからで,デンマークのN.ステノは水晶などの結晶について,面角一定の法則を発見した(1669)。同じころ,イギリスのR.フックは,結晶は超顕微鏡的に小さい構成単位が,規則正しく繰り返して配列してできているという予想を発表し,この考えはその後の研究者にも受け継がれた。…

【地層】より

…化石の成因に関して,イタリアではレオナルド・ダ・ビンチが生物起源のものが地層に化石として残される過程を具体的に観察し記述している。その後17世紀に,コペンハーゲン生れでイタリアでほとんどを過ごしたN.ステノは地層の形成に関して次のような観察を行っている。(1)堆積層は固まった基盤の上に形成される,(2)したがって下の基盤層は新規の堆積の始まる前に固結していなければならない,(3)一つの層は地表をすべて覆っているか,または他の層によって局限されて分布する,(4)一連の堆積が継続中はそこに水が存在して沈殿が行われるのであるから,その下にある地層は上のものより古い。…

※「ステノ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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