ストレーチー(英語表記)Giles Lytton Strachey

精選版 日本国語大辞典 「ストレーチー」の意味・読み・例文・類語

ストレーチー

[一] (Everyn John Strachey イブリン=ジョン━) イギリスの政治家。労働党から下院議員となり、一時労働党を脱党したが、第二次世界大戦直前復党し、アトリー内閣の食糧相・陸相歴任。マルクス主義批判の立場に立った。主著「現代の資本主義」「帝国主義終焉」。(一九〇一‐六三
[二] (Giles Lytton Strachey ジャイルズ=リットン━) イギリスの伝記作家。心理小説の手法を導入した新しい伝記文学を創始。代表作ビクトリア朝偉人列伝」「エリザベスエセックス」。(一八八〇‐一九三二

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デジタル大辞泉 「ストレーチー」の意味・読み・例文・類語

ストレーチー(Giles Lytton Strachey)

[1880~1932]英国の伝記作家。人物実像を赤裸々に描き出し、伝記文学に新生面開拓。作「ビクトリア朝の傑物伝」「ビクトリア女王」「エリザベスとエセックス」。

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改訂新版 世界大百科事典 「ストレーチー」の意味・わかりやすい解説

ストレーチー
Giles Lytton Strachey
生没年:1880-1932

イギリスの批評家,伝記作家。エリザベス朝以来の名門の出身。ケンブリッジ大学在学当時の友人であるE.M.フォースター,J.M.ケインズらとともにいわゆるブルームズベリー・グループ一員であった。イギリスの伝記文学に新しい感受性を導き入れたことで知られているが,その方法は,第1次大戦後の価値観喪失という精神風土に根ざした鋭利で冷厳な批判の目で対象の偶像性をはぎとることにある。その題材にとり上げられた人物には《ビクトリア朝のお偉方》(1918)のF.ナイチンゲール,ゴードン将軍やビクトリア女王(《ビクトリア女王》1921)などがあるが,嘲笑を秘めた優雅な文体は,彼がフランスの古典劇,心理小説に精通していることから身につけた特徴だろう。伝記作品にはほかに《エリザベスとエセックス》(1928),《ささやかな肖像》(1931)があり,批評作品として,《フランス文学道標》(1912)などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ストレーチー」の意味・わかりやすい解説

ストレーチー
Strachey, Evelyn John St. Loe

[生]1901.10.21. サリー,ギルフォード
[没]1963.7.15. ロンドン
イギリスの政治家,労働党の理論家。 1923年オックスフォード大学在学中に独立労働党に入党。 29年労働党から下院議員に当選したが,31年党を離れ共産党に入党。 39年第2次世界大戦勃発とともに共産党と決別,45年労働党に復帰して下院議員に当選。 46~50年 C.アトリー内閣の食糧相,50~51年陸相などを歴任。『資本主義の危機の本質』 The Nature of Capitalist Crisis (1935) で資本主義の運命と帝国主義についてネオ・マルクス主義的理論を展開。『現代の資本主義』 Contemporary Capitalism (56) でイギリスの議会制民主主義を社会主義への平和的移行を可能にする最善の制度として評価。『帝国主義の終末』 The End of Empire (59) ではレーニンを批判して,資本主義が過度に成熟しても,国民所得を再分配し,国内投資を増加させることによって帝国主義的膨張を抑制できると説いた。

ストレーチー
Strachey, (Giles) Lytton

[生]1880.3.1. ロンドン
[没]1932.1.21. バークシャー,ハンガーフォード
イギリスの批評家,伝記作家。ケンブリッジ大学卒業後,「ブルームズベリー・グループ」の一員として活躍。 1912年にはすぐれたフランス文学の概説書『フランス文学の里標』 Landmarks in French Literatureを著わし,その後もフランス文学の紹介に努めた。代表的な業績は『ビクトリア朝の名士たち』 Eminent Victorians (1918) ,『ビクトリア女王』 Queen Victoria (21) ,『エリザベスとエセックス』 Elizabeth and Essex (28) などの伝記作品であり,故人礼賛に終始した従来の伝記制作に革命を引起した。彼によって伝記文学の芸術的地位は大いに高められ,しばしばフランスの A.モーロアと併称される。

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百科事典マイペディア 「ストレーチー」の意味・わかりやすい解説

ストレーチー

英国の批評家,伝記作家。ケンブリッジ大学在校時の友人E.M.フォースター,J.M.ケインズらとともにブルームズベリー・グループの一員。第1次大戦後の英国の伝記文学に新しい方向を開いた。伝記の代表作にビクトリア朝の因習を痛烈に批判した《ビクトリア朝のお偉方》(1918年)があるほか,批評作品に《フランス文学の道標》(1912年)などがある。
→関連項目伝記

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世界大百科事典(旧版)内のストレーチーの言及

【伝記】より

…19世紀のイギリスでは,ロッカートの《スコット伝》,フォースターの《ディケンズ伝》,フルードの《カーライル伝》など,日記,手紙また身近な見聞を生かした傑作があいついで出て,伝記作家としてのカーライルも見落とせない。現代伝記の先頭を切ったのも,やはりイギリスのG.L.ストレーチーで,彼の鋭利な偶像破壊の切れ味と心理性は,伝記における一種の革命であり,A.モーロア,S.ツワイク,ルートウィヒE.Ludwigらを生み出す機縁をなした。その後も伝記作家は多士済々,とくにアメリカで幅広い調査力を生かした大著が目立つ。…

【ブルームズベリー・グループ】より

…名称はスティーブン家がロンドンのブルームズベリー街にあったことに由来する。メンバーは,姉妹のそれぞれ夫になるクライブ・ベル,レナード・ウルフをはじめ,J.M.ケインズ,リットン・ストレーチー,ロジャー・フライ,E.M.フォースターらで,美術評論家,政治評論家,経済学者,小説家など多分野にわたっているが,いずれも同世代でケンブリッジのトリニティ,キングズ両学寮で学んだ。そして当時の哲学教師G.E.ムーアの《倫理学原理》(1903)の中の〈最も価値あることは人の交わりの喜び,美しいものを享受すること〉という文句に影響されていた。…

※「ストレーチー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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