日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
スペリー(Roger Wolcott Sperry)
すぺりー
Roger Wolcott Sperry
(1913―1994)
アメリカの神経学者。コネティカット州ハートフォードに生まれる。オバーリン大学の英文科を卒業したが、引き続き同大学で心理学を学び、1937年に修士号を得た。その後シカゴ大学の大学院に進み、1941年に動物学の博士号を取得した。ハーバード大学で霊長類学の研究を続けたのち、1946年にシカゴ大学の解剖学助教授となり、1952年心理学準教授に昇格し、アメリカ国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)の神経病部門の主任を兼務した。1954年にカリフォルニア工科大学で精神生物学の教授となり、1984年まで務めた。
大脳は左右二つの半球で構成され、脳梁(のうりょう)とよばれる多量の神経線維束がそれらを連絡している。スペリーはてんかん治療のため脳梁の切断手術を受けた患者を観察、その患者が右視野のみで物や文字を見ると、物の名をいうことや文字を読むことができるが、左視野のみで見た場合には、物の名をいえず、文字も読めなかった。この観察の結果、大脳の左半球では言語の理解や表現ができるが、右半球では言語による表現ができないことを明らかにし、両半球がそれぞれ異なる機能をもつことを示した。1981年「大脳半球の機能特化に関する発見」によりノーベル医学生理学賞を受賞したが、「大脳皮質視覚野の情報処理に関する発見」をしたヒューベル、T・N・ウィーゼルとの同時受賞であった。
[編集部 2018年8月21日]
『ロジャー・スペリー著、須田勇・足立千鶴子訳『融合する心と脳――科学と価値観の優先順位』(1985・誠信書房)』