スーラ(読み)すーら(英語表記)Georges Seurat

精選版 日本国語大辞典 「スーラ」の意味・読み・例文・類語

スーラ

(Georges Pierre Seurat ジョルジュ=ピエール━) フランスの画家。色彩学の理論に基づき、点描画法を創始。新印象派を確立。独特な形体把握による人物描写が特徴。代表作に「グランド・ジャット島の日曜日午後」「アニエールの水浴」など。(一八五九‐九一

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デジタル大辞泉 「スーラ」の意味・読み・例文・類語

スーラ(Thula)

イエメン西部に山岳部族の村。首都サヌアの北西約45キロメートルに位置する。城壁に囲まれた集落があり、オスマン帝国時代も独立を保ったことで知られる。石造り煉瓦れんが造りの伝統的なイエメン建築の建物が多く残っている。

スーラ(Georges Pierre Seurat)

[1859~1891]フランスの画家。色彩理論・光学理論を研究して点描法による新印象主義を創始。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スーラ」の意味・わかりやすい解説

スーラ
すーら
Georges Seurat
(1859―1891)

印象主義を代表するフランスの画家。12月2日パリの富裕な家庭に生まれる。1875年に彫刻家ジュスタン・ルキアンについて素描を学ぶ。3年後エコール・デ・ボザールに入学、アングルの弟子アンリ・レーマンの指導を受けるが、翌79年に退学。1年間兵役としてブレストで過ごしたのち、パリに戻って素描に励み、ミレーを思わせる人物像や風景などを、滑らかな画肌をもった薄明のなかに描き出す。同時に、学生時代から関心を抱いていた色彩学の研究に熱中し、シュブルール、シャルル・ブラン、オグデン・ルードなどの光と色彩に関する科学的著作を熟読、また、ドラクロワの日記や作品を研究し、その色彩の対比や補色の使用を解明するノートを作成する。こうした色彩分析の成果は最初の大作『アニエールの水浴』において示された。この絵は84年に設立されたアンデパンダン展に出品され、これを機にシニャックと親交を結んだ。シニャックの示唆によりあらゆる土色の色調をパレットから排除し、さらにシステマティックな点描法を発展させて、これまで追求してきた光学的処方の全面的な実践である大作『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を86年の最後の印象派展に出品した。これはシニャックやピサロらの作品とともに新印象主義の誕生を宣言するものであった。さらに彼は色彩理論に加えて構図に対しても科学的なアプローチを試みた。『サーカス客寄せ』や『シャユ踊り』などの作品のなかには、色彩のみならず線や運動の表現的可能性を探究したシャルル・アンリの実験心理学や生理学の理論の反映が認められる。急性のジフテリアにより91年3月29日、大作『サーカス』を未完のまま31歳でパリに没した。

[大森達次]

『ピエール・クルティヨン著、池上忠治訳『スーラ』(1969・美術出版社)』『乾由明著『新潮美術文庫32 スーラ』(1974・新潮社)』『ルイ・オートクール著、黒江光彦訳『印象派の巨匠たち10 スーラ』(1976・小学館)』


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改訂新版 世界大百科事典 「スーラ」の意味・わかりやすい解説

スーラ
Georges Pierre Seurat
生没年:1859-91

フランスの画家。新印象主義の中心人物。パリの富裕な家に生まれ,生活のために働く必要がなく,絵画に専念できた。1878年エコール・デ・ボザール(国立美術学校)に入学。アングルの弟子レーマンHenri Lehmannに学ぶかたわら,アングル,ドラクロア,ベロネーゼ,ピュビス・ド・シャバンヌを研究するとともに,印象主義にも興味をもち,シュブルール,ルッドなどの色彩理論に感化されて,科学的な秩序に基づいた画面構築を志向する。これは結果として,いまだ直観的で恣意的だった印象主義を体系化することになった。この際,決定的だったのは〈色彩の同時的対比(コントラスト)〉(シュブルール)という考え方である。82-83年,対象を輪郭のぼんやりとした影のように表現するデッサンによって明暗のコントラストを探究し,83年,油彩による最初の大作《アニエールの水浴》に着手する(1884完成)。スーラの本質ともいうべき,冷ややかな静けさに満たされたこの作品は,84年,彼自身創立メンバーの一人だったアンデパンダン展(第1回)に出品され,シニャックの共感を得る。以後,二人はともに,純色を点描によって並置することで輝かしい視覚混合を生み出す(点描主義)一方で,画面全体を幾何学的な秩序感覚で統合する,いわゆる新印象主義を基礎づけていく。86年の《グランド・ジャット島の日曜日の午後》はそのみごとな成果であり,そこでは色彩,形態,構図のすべてが稠密に秩序づけられている。彼のこうした秩序志向は,同年出会った象徴主義的美学者アンリCharles Henryの〈科学的美学〉(一定の色彩,線の方向に一定の感情を照応させる,というもの)によって強化され,《客寄せ道化》(1887)をはじめとする,静謐(せいひつ)で象徴主義的な一群の風俗画,また神秘的に静まりかえる海景画が数点描かれ,これらは当時親交のあった象徴主義者たちの間で評判をよんだ。32歳で夭逝。秘密主義に徹した生涯には謎の部分が多いが,その作品は19世紀末から20世紀初頭にかけて,絵画が対象にとらわれない色彩それ自体の可能性を追究していく過程で決定的な影響力をもった。
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百科事典マイペディア 「スーラ」の意味・わかりやすい解説

スーラ

新印象主義を創始したフランスの画家。パリ生れ。美術学校を中退して兵役を志願し,除隊後絵画に専念。色彩学や物理学に啓発されて色彩の光学的研究を深め,これに幾何学的構図法を加味して新印象主義の理論を完成した。その理論に基づく《アニエールの水浴》(1883年―1884年,ロンドン,ナショナル・ギャラリー蔵)はサロンで落選するが,アンデパンダン展に出品し,同調者シニャックを得る。32歳で早逝するまで理論の深化と実践に努めた。代表作に《グランド・ジャット島の日曜日の午後》(1884年―1886年,シカゴ美術館蔵),《ポーズする女たち》(1887年―1888年,メリオン,バーンズ・コレクション),《サーカス》(1890年―1891年,オルセー美術館蔵)などがある。
→関連項目クレーラー・ミュラー美術館後期印象派シカゴ美術館バーンズ・コレクションバン・デ・ベルデライリー

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スーラ」の意味・わかりやすい解説

スーラ
Seurat, Georges

[生]1859.12.2. パリ
[没]1891.3.29. パリ
フランスの画家。新印象主義の点描派の創始者(→点描法)。1878年パリの美術学校に入学し,ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングルの弟子アンリ・レーマンの指導を受けたが翌年退学。その後はルーブル美術館で古典の作品を研究し素描に励むかたわら,ミシェル=ウジェーヌ・シュブルールやヘルマン・ルートウィヒ・フェルディナンド・フォン・ヘルムホルツらの色彩学や光学理論に深い関心を示した。1884年,光と色を分析した最初の点描法による油彩画『水浴』(ロンドン,ナショナル・ギャラリー)を春のアンデパンダン展に出品したが落選,しかしその夏の同展に出品して大きな反響を呼んだ。次いで完全な点描画法による大作『グランド・ジャット島の日曜日の午後』(1884~86,シカゴ美術館)を第8回印象派展に出品し大論争を巻き起こした。以後,『ポーズする女たち』(1887,ペンシルバニア,バーンズ・ファウンデーション),『ラ・パレード』(1887~88,メトロポリタン美術館),『サーカス』(1891,オルセー美術館)などの力作を発表したが,31歳で早逝した。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「スーラ」の解説

スーラ

日本語PostScriptフォント。丸ゴシック系で、M、DB、B、EBの4ファミリーがそろっている。【開】【販】フォントワークス

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世界大百科事典(旧版)内のスーラの言及

【後期印象派】より

…日本では,〈後期印象派〉という訳語はすでに大正期にみられたが,適切とは言えず,〈印象派以後〉と理解すべきものである。展覧会の出品作家は,マネを特例として,ゴーギャン,セザンヌ,ゴッホ,ルドン,ナビ派(ドニ,セリュジエ),新印象主義の画家たち(スーラ,シニャック,クロスHenri‐Edmond Cross),フォービスムの画家たち(マティス,マルケ,ブラマンク,ドランら)といった,印象主義から出発し,それをこえようとした雑多な画家たちであり,そこには表現主義的な傾向が顕著とはいうものの,格別の枠組みがあるわけでもなく,〈Post‐Impressionists〉は,フライ自身も言うとおり,あくまでも便宜的な呼称にすぎなかった。この呼称が主として英語圏でしか用いられないのはこのためである。…

【新印象主義】より

…フランスで19世紀末,1880年代前半から90年代にかけて,まずスーラ,ついでシニャックを中心に展開された絵画運動。〈新印象主義〉という呼称は,象徴主義的美術批評家フェネオンFélix Fénéonによる。…

※「スーラ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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