ズルチン(英語表記)dulcin

デジタル大辞泉 「ズルチン」の意味・読み・例文・類語

ズルチン(〈ドイツ〉Dulzin)

人工甘味料の一。蔗糖しょとうの約250倍の甘さがあるが、人体に有害なため使用が禁止されている。

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精選版 日本国語大辞典 「ズルチン」の意味・読み・例文・類語

ズルチン

〘名〙 (Dulzin) 人工甘味料の一つ無色針状結晶。化学式 CaH12N2O2 蔗糖の二〇〇~三〇〇倍甘い。日本では昭和二三年(一九四八)に食品添加剤として許可されたが、動物実験から発癌性が明らかになり、同四三年に全面使用禁止。スクロール
世相(1946)〈織田作之助〉三「砂糖代りのズルチンを入れた紅茶を持って来たのである」

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改訂新版 世界大百科事典 「ズルチン」の意味・わかりやすい解説

ズルチン
dulcin


合成甘味料一種で,パラエトキシフェニル尿素p-ethoxyphenyl-ureaとも呼ばれる。ショ糖の約200~300倍の甘みを有するが,動物実験により発癌性がはっきりしたので,日本では1968年に使用が禁止された。合成法が容易であり,しかも安価であったことから,日本においては第2次大戦後の砂糖不足の時代に,甘味源として大きい役割をはたした。
合成甘味料
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化学辞典 第2版 「ズルチン」の解説

ズルチン
ズルチン
dulcin

p-phenethylurea,p-ethoxyphenyluaea.C9H12N2O2(180.21).ホスゲンp-フェネチジンとアンモニアを1モル量ずつ縮合させると得られる尿素誘導体.結晶.融点173~174 ℃.800倍の冷水,50倍の熱水に可溶.スクロースの約250倍の甘味をもつ人工甘味料であるが,サッカリンよりも毒性が強く,連続使用すると人体に有害で,現在は使用されていない.[CAS 150-69-6]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ズルチン」の意味・わかりやすい解説

ズルチン
ずるちん
dulcin

尿素の誘導体。スクロール、p(パラ)-エトキシフェニル尿素ともよばれる。1883年にドイツのベルリナーブラウが発見した化合物。p-フェネチジンにホスゲン、続いてアンモニアを作用させて合成する。無色の針状結晶。冷水にはわずかに溶けるが、熱水には溶けやすい。エタノール(エチルアルコール)にもかなり溶ける。

 ズルチンは甘味が強く、ショ糖の200~300倍もの甘さがある。第二次世界大戦後の食糧難時代に人工甘味料として使われたことがあった。日本では食品添加物として1948年(昭和23)に許可されたが、発癌(がん)性などの毒性が強いことから、1967年には佃煮(つくだに)、漬物などの10品目に限り制限付きで使用が認められたものの、その後1969年には全面使用禁止になった。

[務台 潔・河野友美・山口米子]

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百科事典マイペディア 「ズルチン」の意味・わかりやすい解説

ズルチン

p‐エトキシフェニル尿素を主体とした人工甘味料。分子式C2H5OC6H4NHCONH2。融点174.5〜176.5℃。ショ糖の約300倍の甘味をもつが,発癌性などにより1968年使用が禁止された。
→関連項目合成甘味料

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ズルチン」の意味・わかりやすい解説

ズルチン
dulcin

第2次世界大戦後用いられた人工甘味料の一つ。ショ糖の 200倍の甘味がある。ただし日本の食品衛生法では 1968年以降ズルチンは食品添加物としては禁止されている。一般にフェネケジンか尿素のいずれかを鉱酸塩とし,水溶液を長時間加熱するか,加圧器の中で 160℃に加熱して合成する。

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栄養・生化学辞典 「ズルチン」の解説

ズルチン

 C9H12N2O2 (mw180.21).

 人工甘味料の一つ.発がん性が認められ使用されなくなった.

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世界大百科事典(旧版)内のズルチンの言及

【合成甘味料】より

…化学構造と甘味との関係は古くから研究されているが,アルデヒド基-CHO,オキシム基-CH=NOH,ハロゲン基,アミノ基-NH2,スルホ基-SO3H,トリアジン核,スルホアミノ基-SO2NH2,水酸基-OHをもった化合物がおおむね甘味が強い。しかし,現在までに開発された合成甘味料はサッカリン,ズルチン,チクロ(サイクラミン酸ナトリウム),アスパルテームなど数少ない。さらに,ズルチンとチクロはその安全性に疑いが生じ,それぞれ1968年,69年に日本では使用が禁止されている。…

※「ズルチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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