セイスモサウルス(読み)せいすもさうるす(英語表記)seismosaur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セイスモサウルス」の意味・わかりやすい解説

セイスモサウルス
せいすもさうるす
seismosaur
[学] Seismosaurus halli

竜盤目竜脚形類(亜目竜脚類(下目)ディプロドクス科Diplodocidaeに属する恐竜。アメリカ、ニュー・メキシコ州のモリソン層から発見された。時代はジュラ紀後期。全長35メートルと推定されるので、恐竜としては世界最大とみなされている。実際に発掘された骨は、骨盤尾椎(びつい)・胴椎・仙椎などの椎骨、わずかの血道弓(けつどうきゅう)(椎体から下方へ1対突き出ている突起で、血管を囲む)と肋骨(ろっこつ)で、骨格全体の約30%といわれる。あとの70%は、近縁のディプロドクスやバロサウルスBarosaurusを参考にして骨の形と大きさが推定され、レプリカ(模造品)がつくられた。このレプリカの上腕骨と大腿骨(だいたいこつ)の最小周囲長をもとに、ロバート・マックネイル・アレクサンダーRobert McNeill Alexander(1934―2016)の論文(1985)による計算式で体重が推定され、約42トンと算出されている。セイスモサウルスという属名は、「大地を揺るがすトカゲ」という意味のギリシア語に由来している。デービッド・ジレットDavid D. Gillette(1945― )によると、この属の骨学的特徴は、坐骨(ざこつ)の軸の末端が強く上方に曲がり、横から見るとフック状を呈している点であるという(1991)。ほかに、尾椎の上方に伸びる棘(とげ)が類縁属よりもずっと長く、骨盤もがっしりしていることが指摘されている。そこで、セイスモサウルスは腰の筋肉が発達し尾の働きが強力であったのではないかと想定されている。この恐竜の発掘のいきさつについて述べると、最初は1979年に2人のハイカー砂漠の岩から突き出た巨大骨があることを合衆国管理局に知らせ、1985年に2人がニュー・メキシコ自然史博物館にこの話を持ち込み、同館古生物学者ジレットの指揮による作業が始まった。1986年に新しく開館する州立博物館の展示の目玉になるのではと予想されたからである。発掘はおもにボランティアにより1992年まで続いた。その後、化石クリーニングも同館で行われてきたが、全身骨格を復原することになったのは、2002年(平成14)の夏から秋にかけて日本で開催された「世界最大の恐竜博2002」(千葉・幕張(まくはり)メッセ)への出品のためであった。このときには標本はセイスモサウルス・ハロルムSeismosaurus hallorumとして紹介されたが、本来はジレットが1991年にセイスモサウルス・ホーリSeismosaurus halliとして記載発表し、『The dinosauria』2nd ed.(2004)にもそれが採用されているように、命名規約上、学名はS. halliが有効である。

[小畠郁生]

『冨田幸光・真鍋真監修「世界最大の恐竜博2002」147ページ(カタログ。2002・朝日新聞社、NHK、NHKプロモーション)』『David D. Gillette, illustrations by Mark HallettSeismosaurus ; the earth shaker(1994, Columbia University Press, New York)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セイスモサウルス」の意味・わかりやすい解説

セイスモサウルス
Seismosaurus

爬虫類竜盤目竜脚亜目の大型恐竜。ジュラ紀後期のモリソン累層から発見された。ディプロドクス科とされるが,恥骨,座骨,尾椎骨などはかなり他のディプロドクスと異なる。体長 50m,最長の恐竜と推定される。名は「地震トカゲ」を意味する。発掘にあたってはリモート・センシングで地表下の骨の深度や位置を推定したり,地下貫通レーダ,プロトン自由前進磁気測定,放射性の骨から発せられたガンマ線の測定,音響解析断層写真などの新技術が使われた。

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