セツブンソウ(読み)せつぶんそう

改訂新版 世界大百科事典 「セツブンソウ」の意味・わかりやすい解説

セツブンソウ (節分草)
Eranthis pinnatifida Maxim.

日本の中部山地の半陰地に野生するキンポウゲ科球根性の多年草。2月の節分ごろに,他の花にさきがけて咲くところから和名がつけられた。属の学名もギリシア語のear(春)とanthos(花)に由来する。地下に小さい球状の塊茎をもつ。2月ごろ,7~8cmの茎を伸ばし,その頂に径2cmぐらいのかれんな白色5弁花を1輪咲かせる。花弁にみえるのは萼片で,花弁は退化してみつ槽となっているが目だたない。細い長柄のある深裂する根生葉をつけ,茎の上部に同様に深裂する苞状葉を輪生する。セツブンソウも栽培されるが,園芸的には,南ヨーロッパ原産のキバナセツブンソウE.hiemalis Salisb.(英名winter aconite)のほうが多く栽培されている。キバナセツブンソウは草丈10~15cm,2~3月ごろ径3.5~4.0cmぐらいの鮮黄色花を咲かせる。セツブンソウよりかなり大型であるが,同じように地下に塊茎球根をもつ。両種ともときに山草として鉢栽培にして楽しまれることがある。球根を10月ごろに植えつける。庭植えもでき,冬季よく日の当たる落葉樹下に植えておくとよい。繁殖実生により,種子は採りまきすれば翌春発芽し,3年後から花をつける。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セツブンソウ」の意味・わかりやすい解説

セツブンソウ
せつぶんそう / 節分草
[学] Eranthis pinnatifida Maxim.
Shibateranthis pinnatifida (Maxim.) Satake et Okuyama

キンポウゲ科(APG分類:キンポウゲ科)の多年草。早春植物で、初夏には地上部が枯れる。球状の塊茎がある。茎は高さ約10センチメートル。葉は3全裂し、長い柄がある。花は茎の先に一つずつ開き、径約2センチメートル。萼片(がくへん)は白色で花弁状、花弁は小形で黄色、先が分岐してY字状の蜜腺(みつせん)となる。温帯の林縁や草原に生え、関東地方以西の本州に分布する。石灰岩地によく生える。名は、ほかの植物に先駆けて節分のころ開花することによる。セツブンソウ属は、ユーラシア大陸東部に本種を含めて7種が分布する小さな属である。Eranthis属のうち、セツブンソウだけを別の属とする説もある。

[門田裕一 2020年3月18日]


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百科事典マイペディア 「セツブンソウ」の意味・わかりやすい解説

セツブンソウ

本州(関東以西)の山よりの雑木林などにはえるキンポウゲ科の多年草。地下には球形の塊茎があり,根出葉は長い柄がつき,掌状に裂ける。早春に高さ10cm内外の花茎を出し,上半に柄のない2枚の葉,頂に1個の花をつける。茎葉は不ぞろいの線形に裂け,花は径約2cm,萼片は5枚,白色で淡紫色の条があり花弁状。早春に咲くので節分草の名がある。

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