セバストポリ

精選版 日本国語大辞典 「セバストポリ」の意味・読み・例文・類語

セバストポリ

(Sjevastopol') ウクライナクリミア半島南西端の港湾都市古代にはギリシア植民都市があり、一八世紀以来、ロシア黒海における軍港として発展し、クリミア戦争第二次世界大戦には激戦地となった。

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百科事典マイペディア 「セバストポリ」の意味・わかりやすい解説

セバストポリ

ウクライナ,クリミア半島南端,黒海に臨む港湾都市。工業は各種器具,食品,木材加工など。古代ギリシアの植民市。1783年ロシアが占領,現在の都市を創設。1804年ロシアの黒海艦隊の基地となり,クリミア戦争では英仏艦隊に進入されロシアは黒海艦隊を湾内に自沈させ要塞に立てこもって激戦を繰り広げトルストイの《セバストポリ物語》で知られる349日間の籠城(ろうじょう)が行われた。第2次大戦の激戦地でもある。ソ連時代はウクライナ・ソビエト社会主義共和国クリミア州に属さず,キエフ(1954年以前はモスクワ)の直轄であった。ソ連崩壊後,キエフとともにウクライナの特別市となったが,セバストポリ軍港にはロシア連邦海軍基地とウクライナ海軍の司令部が置かれた。帝政ロシア・ソ連邦時代を通じて黒海艦隊の基地であり,ロシアはウクライナと租借協定を結んでソ連崩壊後も最重要基地として使用していた。2014年2月ウクライナで親ロシアのヤヌコーヴィッチ政権が崩壊,親EU・米国の新政権が誕生したことで,ロシアは危機感を募らせ,ロシア系住民が多数を占めるクリミア自治共和国のウクライナからの独立を支持,同年3月自治共和国議会とセバストポリ市議会は独立宣言を採択し住民投票で圧倒的な賛成を得て,クリミア共和国とともに独立した。ロシアは直ちにクリミア自治共和国とセバストポリ特別市をロシア領に編入する条約を結び,編入宣言が行われた。ウクライナはもとより国際連合,EU諸国,米国等はウクライナの国家主権・領土を侵害する違法行為として,独立・編入を承認していない。ロシアにとってはセバストポリとクリミアは歴史的,地政学的,軍事的に譲れない地域であり,ウクライナ東部にはクリミア,セバストポリ以外にもロシア系住民が多い地域が多数あり,ロシアの動向とともに軍事的緊張が一気に高まる可能性がある。人口は34万559人(2012)で7割強がロシア系。
→関連項目ウクライナ問題クリミア自治共和国

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セバストポリ」の意味・わかりやすい解説

セバストポリ
せばすとぽり
Севастополь/Sevastopol'

ウクライナのクリミア半島南西部にある都市。人口34万2000(2001)。旧ソ連黒海艦隊の根拠地で、モスクワからの鉄道の終点であり、クリミア各地への自動車道路の基点であるなど、戦略・交通上の要地。また、ソ連崩壊後、黒海艦隊とセバストポリの帰属をめぐって、ロシアとウクライナは対立していたが、1996年6月黒海艦隊を両国で二分することが決まり、さらに1997年5月ウクライナがセバストポリにある黒海艦隊基地を20年間ロシアに貸すことに合意して、最終的に解決した(ソチ協定)。海軍工廠(こうしょう)のほか、船舶修理、機械組立て、水産加工などの工場がある。西に向かって黒海に突き出たヘルソネス半島が南にあり、クリミア山脈を南東に背負い、チョールナヤ川の河口とセバストポリ湾を北に控えた良港を有する。半島には古代ギリシア植民都市ヘルソネスの遺跡があり、市名も古代ギリシア語の「神聖な都市」から発生した。二度にわたって史上有名な攻防戦が行われたことにより、「英雄都市」の称号を得ている。攻防戦の記念物も多い。マラホフ・クルガンの丘の上には戦没者記念碑と廟(びょう)があり、市内には、クリミア戦争を記念する1854~1855年クリミア防衛記念館、1944年5月の反攻ジオラマ館、黒海艦隊を記念する海軍博物館のほか、二つの劇場などが置かれている。

[渡辺一夫・外川継男]

歴史

クリミア・ハン国併合後、ロシア政府は1783年ここに要塞(ようさい)兼港を建設し、港は帝政時代から海軍の基地として使用されてきた。1854~1855年、クリミア戦争中にここに立てこもったロシア軍はイギリス・フランスの連合軍に果敢な防衛戦を展開し、士官候補生として参戦したトルストイはそのときの経験を作品『セバストポリ物語』に仕上げた。第二次世界大戦中の1941~1942年にも、ソ連軍はドイツ軍を相手に二度目の「セバストポリの防衛戦」を行った。この戦闘のあと、町は1942年7月から1944年5月までドイツ軍に占領されたが、戦後復興した。

[外川継男]

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改訂新版 世界大百科事典 「セバストポリ」の意味・わかりやすい解説

セバストポリ
Sevastopol’

ウクライナ南部,クリミア自治共和国の海港都市。ギリシア語で〈高い都市〉の意。1797-1801年はアフチアルAkhtiarと呼ばれた。人口33万8508(2005)。前5世紀には,ギリシアの植民市ケルソネソスが建設された地域として知られ,その後クリミア地方の政治・商業の中心として栄えた。13世紀タタール人の支配下で衰えたが,18世紀末にロシア領となるとともに港がつくられ,19世紀初めには黒海艦隊の基地となった。1853-56年のクリミア戦争の際にはL.トルストイの《セバストポリ物語》で有名な349日間の包囲攻撃に耐え,またロシア革命後の内戦期には1918-20年の間ドイツ,フランス,白衛軍に占領されていた。第2次世界大戦ではドイツ軍に包囲されたが,42年7月まで250日間もちこたえ,以後44年5月までナチス・ドイツに占領されて完全に破壊された。戦後は復興して軽工業もおこり,高等教育機関や黒海関係の研究所のほか,その歴史を反映する記念碑や黒海艦隊,クリミア戦争,防衛,解放などに関する多くの博物館や美術館がある。
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