セントポーリア(読み)せんとぽーりあ

精選版 日本国語大辞典 「セントポーリア」の意味・読み・例文・類語

セントポーリア

〘名〙 (Saintpaulia) イワタバコ科多年草アフリカスミレ属の属名東アフリカタンガニーカに約一〇種あり、日本ではアフリカスミレなど数種が観賞用に栽培される。

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デジタル大辞泉 「セントポーリア」の意味・読み・例文・類語

セントポーリア(〈ラテン〉Saintpaulia)

イワタバコ科の多年草。葉は卵円形で両面に毛を密生する。夏から秋に、スミレに似た濃紫・紫・桃・白色などの花を数個、総状につける。アフリカの原産で、観賞用に温室などで栽培される。アフリカすみれ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「セントポーリア」の意味・わかりやすい解説

セントポーリア
せんとぽーりあ
[学] Saintpaulia

イワタバコ科(APG分類:イワタバコ科)セントポーリア属の総称。熱帯アフリカ東部原産の多年草で、原種は約20種あり、発育形態によって短茎種と長茎種に分けられる。ほとんどの種が青紫色で、スミレに似た5弁花をつけるので、アフリカスミレAfrican violetともよばれる。品種改良の歴史は100年足らずであるが、花形、花色、葉形、葉色などは変化に富み、多くの品種がある。これらにはおもにアメリカで改良された趣味家用品種と、ドイツを中心に育成された生産者用品種とがある。暑さには弱いが室内で栽培できることから、生活環境の改善に伴って普及した植物といえる。

 栽培には温度18~24℃、湿度70%、光量約1万ルクスの温暖な環境が適しており、5℃以下の低温や直射日光のような強光に長時間当てると枯死する。用土はバーミキュライトピートモスを半々に混ぜたものなどを用い、3~5号鉢に軽く植える。灌水(かんすい)はくみ置き水を用い、鉢土の表面が乾いたら与える程度とする。肥料は液肥を成長期に月2回の割合で施す。縞花(しまばな)品種以外は葉挿しによって容易に増殖できる。

[唐澤耕司 2021年7月16日]

文化史

セントポーリア属は18種知られるが、原産地タンザニアケニアの一部に限定され、その発見は遅かった。1892年(1850年説もある)当時ドイツ領東アフリカのウサンバラ地方の長官ウォルター・フォン・セントポール男爵Walter von Saint-Paul(1860―1910)が、タンザニア北部のタンガ海岸で最初の種を発見、ドイツに送った標本からヘレンハウゼン王室植物園長のヘルマン・ウェンドランドHermann Wendland(1825―1903)が発見者を記念した属をたて、セントポーリア・イオナンタSaintpaulia ionantha H.Wendl.と命名した。イオナンタはスミレのようなという意味。1930年にアメリカのアーマコスト・アンド・ロイストン社がイオナンタとコンフーサS. confusa B.L.Burttの雑種ブルーボーイを作出、その子孫から新品種が続々誕生し、ブームの礎(いしずえ)となった。

[湯浅浩史 2021年7月16日]


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改訂新版 世界大百科事典 「セントポーリア」の意味・わかりやすい解説

セントポーリア
Saintpaulia

イワタバコ科アフリカスミレ属の小型の多年草。この属は東アフリカに約21種が分布する。セントポーリア・イオナンタS.ionantha H.Wendl.,その他数種の交雑によって作出された多数の園芸品種がある。かれんな美しい花をつけ,また弱光下でもよく育つので,室内植物として人気がある。花や草の様子がスミレに似ているところから,英名をアフリカスミレAfrican violetと呼ばれるが,スミレの仲間ではない。属名は発見者のWalter von Saint-Paul男爵にちなんでつけられた。

 園芸品種の多くは茎が短くて地際から長さ7~8cmの葉を生じるが,茎がよく伸長し互生に葉をつけ,つり鉢に向く品種もある。葉は卵形ないし心臓形で,全面に微細な毛をもつが,葉形には変化があり,また斑入り葉の品種もある。葉腋(ようえき)に1ないし数花をつける。花は径3cmくらいで,皿形に広がり,5裂し,上方の2裂片は小さい。一重咲きのほかに半八重,八重咲きがある。中心に1本のめしべと2本(時として4本)のおしべがある。野生種の花は,ほとんどが青またはすみれ色であるが,園芸品種にはこのほかに白,桃,赤,紫色などがあり,色彩は豊富で,ほとんど周年開花する。最低15℃以上の温室または室内で栽培する。春から秋にかけては遮光下で栽培する。原産地がアフリカの高地で涼しいためか,暑さに少し弱いので,夏は極力,気温の上昇を防ぐ。また,空中湿度を高くし,鉢内の過湿をさける。室内栽培では南面の明るい場(ただし直射日光はさける),または蛍光灯直下(6000lx以上)に置く。培養土は通気,保水性のよいものを用いる。葉挿し,株分けで繁殖する。
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百科事典マイペディア 「セントポーリア」の意味・わかりやすい解説

セントポーリア

アフリカスミレとも。アフリカ原産のイワタバコ科の多年草で20種ほどが知られているが,一般に栽培されるのは交雑起源の園芸品種。全体に軟毛を密生し多肉質。茎は短く,葉は心臓形で,表は濃緑,裏は淡紫紅色を帯びる。花は紫色を基調に白・ピンク・青紫色などがあり,また花の形や葉の形によるさまざまな園芸分類がある。ふつう鉢植にするが,排水良好な腐植土を用い,直射日光の当たらぬようにする。繁殖は葉ざしによる。
→関連項目ストレプトカーパス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セントポーリア」の意味・わかりやすい解説

セントポーリア
Saintpaulia ionantha; African violet

イワタバコ科の多年草で,熱帯アフリカ原産。普通鉢植にして温室で栽培し観賞する。茎は長さ2~3cmで大部分地中にあり,葉は多肉質の円形または長楕円状卵形でロゼット状をなし,長さ7~8cmで両面は毛でおおわれる。株の中央から 10cmほどの花茎を伸ばし1~6個の花を総状につける。花は紫青色で直径約 3cm,やや唇形でスミレに似ているところからアフリカスミレの名もある。欧米で改良が進み,白花やピンク,八重咲きなど園芸品種は非常に多い。葉挿しなどによって容易に繁殖するが,低温に非常に弱いため日本では温室外での越冬はむずかしい。

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