ゼーマン(Pieter Zeeman)(読み)ぜーまん(英語表記)Pieter Zeeman

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ゼーマン(Pieter Zeeman)
ぜーまん
Pieter Zeeman
(1865―1943)

オランダの物理学者。ゼーラント州ゾンネメアの生まれ。1885年ライデン大学に入学、超電導現象の発見者カマーリン・オネス(力学)やローレンツ(実験物理学)などに学ぶ。1890年ローレンツの助手となってカー効果を研究、1892年その結果をまとめて最初の論文を発表し、オランダ科学協会の金賞を受賞、1893年には同じテーマで学位を得た。ストラスブールのコールラウシュ研究所で流体中における電磁波の伝播(でんぱ)について一学期間研究したのち、1894年ライデン大学に戻り、1895~1897年同大学私講師、1897年アムステルダム大学講師、1900年同大学教授、さらに1908年ファン・デル・ワールスの後を継いで物理学研究所の指導者に、1923年には彼のために新設された研究所(後のゼーマン研究所)の指導者となった。

 彼の最大の功績は、1896年にゼーマン効果を発見したことである。電磁石磁極の間に置いたナトリウム炎からのD線を、ローランドの考案した凹面格子で調べ、D線が通常の場合より広がることを発見した。この現象がローレンツの電子論で説明できることを示したのに続き、電子論から予想されるとおり、広がった線の両側の部分が偏光していること、線は実は広がるのではなく2~3本に分岐していることを実証し、また電子の電荷は負で、そのe/m(電子の電荷の絶対値と質量の比)は電磁単位で107程度の値であるとして、電子の存在に実験的根拠を与えた。こうした磁場が放射現象に与える影響の研究により、1902年ローレンツとともにノーベル物理学賞を受賞した。

 このほか、カナル線陽極線)のドップラー効果に関する実験的研究、フレネル随伴係数におけるローレンツ項の存在を示したこと、質量分析器を用いて38Ar,64Niなどの同位元素を発見したことなどの業績がある。

[杉山滋郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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