ソレアイト(英語表記)tholeiite

岩石学辞典 「ソレアイト」の解説

ソレアイト

広く分布している玄武岩の一種.斜長石斑晶を含む斑状の玄武岩で,オージャイトと低Ca-輝石(ピジョン輝石,ハイパーシンまたは両方)の両方を含んでいる.橄欖(かんらん)石はあったりなかったりで,あっても5%容量比以下で斑晶として存在する.橄欖石はけっして石基には産出しない.結晶の間を埋める石基はガラスを含み,アルカリ量に対して少々SiO2に過飽和である.ゆっくり冷えた再結晶のガラスは石英アルカリ長石のグラフィック組織の連晶となる.石基の残りはインターグラニュラー組織またはサブオフィティック組織となる.ケネディはムル地方の研究報告で非斑状のマグマ型に使用したが,ティレーはアルカリに対してSiO2が過飽和で,ノルム値のハイパーシン(hy)が含まれており,実際の鉱物にはハイパーシンかピジョン輝石を含むものとした[Kennedy : 1933, Tilley : 1950].地質環境の違いで様々な種類のものが知られている.ケネディはムル地方の玄武岩の調査から,ソレアイト質マグマを非斑状の中央マグマ型として定義した[Kennedy : 1933].ティレーの定義はケネディの調査を基礎にしたものである[Tilley : 1950].早い頃にローゼンブッシュはソレアイトを橄欖石が乏しいか欠除している玄武岩と定義し,インターサータル組織を示し,ガラス質か潜晶質の物質の最終充填物(mesostasis)のパッチをもつ岩石とした[Rosenbusch : 1887].この定義はティレーの定義に該当し,この組織の岩石はムル地方のものに見られる.ローゼンブッシュの岩石名は,ドイツ,ナーエ(Nahe)地方のソレイ(Tholei)でスタイニンガーが区分した名称に由来している[Steininger : 1840].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソレアイト」の意味・わかりやすい解説

ソレアイト
それあいと
tholeiite

ソレアイト質玄武岩と同義語。アルカリ成分に乏しく、比較的カルシウムや鉄などに富む玄武岩をさす。構成鉱物としてはカルシウムに富む斜長石、単斜輝石を主とし、橄欖(かんらん)石は含まれていても多くないのが普通である。石基の輝石はカルシウムに乏しいピジョン輝石であるのが特徴の一つとされ、橄欖石と反応関係にある。石基に珪酸(けいさん)鉱物を含む。この名称はドイツのサクソン地方トライに産する古期の玄武岩に由来するが、ドイツの岩石学者ローゼンブッシュにより拡大解釈され、現在の用法となった。その後アメリカの岩石学者ケネディW. Q. Kennedyによって橄欖石玄武岩マグマとともに本源マグマの一つとされ重要視されるに至った(1933)。日本では伊豆・箱根などでみられるもののうち、かなりのものがソレアイトに属する。ソレアイト質玄武岩と同一成因系統の岩系の総称としても用いられる。この場合ピジョン輝石質岩系に対応する。ハワイ、アイスランドなど世界的に広く分布する。

矢島敏彦

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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