タツナミソウ(読み)たつなみそう

改訂新版 世界大百科事典 「タツナミソウ」の意味・わかりやすい解説

タツナミソウ (立浪草)
Scutellaria indica L.

丘陵や山ろくの道端に生えるシソ科多年草和名は花が並んで咲く様子を波頭に見立てたものである。タツナミソウ属Scutellaria英名skullcap。茎は短くはった根茎から立ち上がり,四角形で高さ20~40cmとなり,密に開出毛があってほとんど分枝しない。葉は対生し,卵状心形で両面ともに軟毛があり,長さ1~3cm,縁には鈍鋸歯があり,葉柄がある。花は茎の先端に花穂を作って,5~6月ころに一方向を向いて開く。萼は背面にふくらみがある。花冠は長い筒があり,基部で曲がってほぼ直立し,先は2唇形,青紫色で長さ約2cm,上唇はかぶと状にふくらみ,下唇は3裂して開出し濃紫色の斑点がある。本州,四国,九州朝鮮中国,ベトナムに分布する。コバノタツナミvar.parvifolia Makinoは葉が小さく,鋸歯の数が少ないもので,海岸近くの山地に多い。一名ビロードタツナミともいう。タツナミソウの仲間はいずれも青紫色の美しい花をつけ,山草として栽培されることがあり,日本には他に次のような種が分布している。

 オカタツナミソウS.brachyspica Nakai et Haraは葉がやや三角状卵形で,茎には密に下向きの毛があり,花穂が短い。本州と四国に分布する。ホナガタツナミS.maekawae Haraは湿った山の林下に生え,高さ7~20cm。茎には下向きに少し曲がった毛があり,葉は長卵形で茎の基部近くに集まる。本州福島県以西に分布する。シソバタツナミS.laeteviolacea Koidz.は湿った木陰に生え,茎には上向きに曲がる毛があり,葉は光沢があり裏面は紫色を帯びることが多い。本州,四国,九州に分布する。ヤマタツナミソウS.pekinensis Maxim.var.transitra(Makino)Haraは茎に上向きの毛があり,葉は卵状三角形で両面ともに粗毛があり,花は約60度の角度で斜上する。北海道,本州,四国,九州,朝鮮の山地に分布する。エゾタツナミvar.ussuriensis(Regel)Haraは葉が薄くてほとんど毛がなく,近畿地方以北,北海道,朝鮮,中国北部,シベリアに分布する。ナミキソウS.strigillosa Hemsl.は海岸の砂地に生え,花は葉腋(ようえき)につく。日本全土,朝鮮,中国,サハリンに分布する。またコガネヤナギS.baicalensis Georgiは高さ50cmほどにもなる多年草で,黄色の根を乾燥したものを黄芩(おうごん)といい,漢方で解熱,腹痛などに用いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タツナミソウ」の意味・わかりやすい解説

タツナミソウ
たつなみそう / 立浪草
[学] Scutellaria indica L.

シソ科(APG分類:シソ科)の多年草。茎は短い地下茎から直立して、高さ20~30センチメートル。密に開出毛がある。葉は対生し、卵状心臓形、両面ともに軟毛があり、裏面には腺点(せんてん)がある。5~6月、茎の先端に花穂をつけ、青紫色の花を開く。花冠は基部で折れ曲がって直立し、長さ1.5~2センチメートル。先は2唇に分かれ、一方向に向けて開花する。下唇に濃紫色の斑点(はんてん)がある。果実は、熟すと萼片(がくへん)の上側が外れて、分果とともに落ちる。野原や丘陵の草地に生え、本州から九州、および朝鮮半島、中国、台湾、インドシナに分布する。名は、花が咲く状態を波頭に見立てていう。変種のコバノタツナミは一名ビロードタツナミともいい、葉は小形で毛を密生するものが多い。伊豆半島以西の本州から九州の海岸近い山地に多く分布する。

 ヤマタツナミソウS. pekinensis Maxim. var. transitra (Makino) Haraは、高さ10~35センチメートル。タツナミソウに似て茎に上向きの毛があり、葉は卵状三角形。花冠は基部から約60度に立ち上がる。山地の木陰に生え、北海道から九州、および朝鮮半島に分布する。この変種エゾタツナミソウは、葉は薄くて毛はほとんどなく、近畿地方以北の本州、北海道、および朝鮮半島、中国北部、東シベリアに分布する。

 シソバタツナミS. laeteviolacea Koidz.は、茎には上向きに曲がった毛があり、葉面は先のほうに曲がった毛に覆われて光沢がある。山地のやや湿った木陰に生え、宮城県以南の本州から九州に分布する。全体が大形で、葉が長卵形の変種をツクシタツナミソウといい、西日本に分布する。

 オカタツナミソウS. brachyspica Nakai et Haraは、茎には下向きの縮れた毛があり、葉は三角状卵形で両面は毛で覆われ、裏面に腺点がある。タツナミソウに比べて花穂が短いのが特徴である。丘陵地に生え、宮城県以南の本州、四国に分布する。

[村田 源 2021年9月17日]


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百科事典マイペディア 「タツナミソウ」の意味・わかりやすい解説

タツナミソウ

シソ科の多年草。本州〜九州,東アジアの野原や丘陵などにはえる。茎は高さ20〜40cm,葉は対生しハート形で両面に毛が多い。5〜6月,茎の頂に花穂を出し淡紫色で長さ2cmほどの唇形(しんけい)花をつける。花は2列に並び,花冠の基部が曲がって立ち,一方を向いて開く。萼の上部に円盤状の付属物がある。

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