タテヤマキンバイ(読み)たてやまきんばい

改訂新版 世界大百科事典 「タテヤマキンバイ」の意味・わかりやすい解説

タテヤマキンバイ (立山金梅)
Sibbaldia procumbens L.

日本では立山で初めて発見された,黄色の花をもつバラ科の高山植物。高山帯の日向の砂礫(されき)地に見られ,草丈5~10cm,茎は地をはい,木質化する。葉は3出複葉で,長い柄がある。小葉はくさび形をなし,先端は3~5個の鋸歯がある。夏に,茎の先端部分より花茎を出し,花序は散房状で,花は非常に小さい。花弁は5枚,黄色で萼片の方が少し長い。おしべ5本,めしべ5~20本。果実瘦果(そうか)。本州中部地方と北海道の高山にまれに産し,サハリン千島からシベリアをへてヨーロッパに,またアラスカからグリーンランドまでと広く北半球寒帯および高山に分布し,氷河時代の残存植物とみなされている。

 タテヤマキンバイ属Sibbaldiaは世界に20種あるが,日本にはこの種のみ産する。キジムシロ属と類縁が近く,同じ属とする人もいる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タテヤマキンバイ」の意味・わかりやすい解説

タテヤマキンバイ
たてやまきんばい / 立山金梅
[学] Sibbaldia procumbens L.

バラ科(APG分類:バラ科)の小さな草状の低木。枝は分枝し、地をはい、斜め上に伸びる。葉は長い柄があり、3出複葉、小葉はくさび形で先端は3~5歯に切れ込む。7~8月、花茎の先に小さな黄色の5弁花を密に開く。雄しべは5本。果実は痩果(そうか)。北海道、中部地方の高山にまれに生え、北半球の寒帯や高山に広く分布する。名は、富山県立山で最初に発見されたことによる。タテヤマキンバイ属は世界に約20種あり、ヒマラヤから中国のおもに高山に多く分布する。萼片(がくへん)、副萼片、花弁それぞれ5枚。花弁は萼片より小さく、色は黄色または紫紅色。雄しべは5または10本で、4本のものが1種ある。

[鳴橋直弘 2020年1月21日]


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