タネバエ(読み)たねばえ(英語表記)seed corn maggot

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タネバエ」の意味・わかりやすい解説

タネバエ
たねばえ / 種蠅
seed corn maggot
[学] Delia platura

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群ハナバエ科に属する昆虫。体長4.5~5ミリメートル、翅長4.7~5ミリメートル。体色は雌雄で異なり、雄は暗黄褐色ないし暗褐色。雌は灰色ないし灰黄色。雄の眼縁部と頬部は銀白色。触角は黒色。胸部背面には不明瞭(ふめいりょう)ながら暗色の3縦条が走り、腹部背面各節の中央には倒三角形の暗色紋が認められる。はねは透明で斑紋(はんもん)はない。成虫は4~5月ごろにもっとも多く圃場(ほじょう)でみつかり、堆肥(たいひ)や油かすなどの有機肥料の臭気に集まり、耕した畑土の表面や割れ目に産卵する。成虫は半月から2か月生存する。卵期は春期5~6日、初夏と秋期では3~4日間、幼虫期は春期15~30日、初夏と秋期では7~10日間で、土中作物種子や苗を食害する。蛹(よう)期は10~20日間。盛夏期は発生が抑制される。越冬は卵、幼虫、蛹(さなぎ)、成虫の各態で行っている。ウリ類、マメ類、ネギ類、キャベツ類、ホウレンソウイネなど各種の作物を加害する。水田のような粘質地に発生が多い。播種(はしゅ)に先だって種子を薬剤で粉衣しておくと効果がある。

[伊藤修四郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のタネバエの言及

【ハナバエ(花蠅)】より

…ハナバエ類の幼虫にはこのほかキノコを食べるもの,針葉樹の球果を食害するもの,シダ植物の葉に潜り食害するもの,動物の糞を食するもの,ギングチバチが朽木中の巣に狩り集めたハエ類を食べて育つと思われるもの,地中営巣性のハナバチがその子のために蓄えた花粉やみつを横取りするものなどが知られている。農林業上の害虫としてはタネバエ,タマネギバエ,ダイコンバエ,テンサイモグリハナバエ,カラマツタネバエなどがある。とくにタネバエDelia platura(イラスト)は世界に広く分布する著名な農業害虫で,日本でも各地にきわめてふつう。…

※「タネバエ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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