タヒバリ(読み)たひばり(英語表記)water pipit

改訂新版 世界大百科事典 「タヒバリ」の意味・わかりやすい解説

タヒバリ (田鷚/田雲雀)
rock pipit
water pipit
Anthus spinoletta

スズメ目セキレイ科の鳥。全長約16cm。背面灰褐色で,白い眉斑があり,下面は淡黄褐色。夏羽では下面の色が濃くなる。ヨーロッパ北西部のイギリスやスカンジナビア半島の磯浜やツンドラ,アルプスやヨーロッパ南部の高山地方の谷や湖沼ぞいの湿った草地,東北アジアの海岸地方と高山地方,さらに北アメリカのツンドラから高地で繁殖し,冬は北アフリカ,アジア南部,アメリカ合衆国などで越冬する。日本では繁殖しないが,シベリアおよびカムチャツカで繁殖したものが10月ころ渡来し4月ころまでいる。越冬中は海岸や干潟平地田畑や草地,川原で見られ,地上を歩きながらおもに昆虫をとらえて食べる。

 タヒバリ類はいずれも緑褐色ないし灰褐色に暗色の縦斑のあるじみな小鳥で,世界的に分布している。ユーラシア極北部ツンドラで繁殖するムネアカタヒバリA.cervinus(英名red-throated pipit)は,暖地への渡りの途中西日本を通過し,水田跡や湿地,海岸でときどき見られる。日本ではこのほか大型のマミジロタヒバリ,それよりやや小さいコマミジロタヒバリ,セジロタヒバリなどが,まれな旅鳥または迷鳥として記録されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タヒバリ」の意味・わかりやすい解説

タヒバリ
Anthus rubescens; buff-bellied pipit

スズメ目セキレイ科。全長 16cm。冬羽(→羽衣)は背面がオリーブ褐色で,不明瞭な黒い縦斑がある。下面は淡い黄白色で,喉の下,胸,脇に黒い縦斑がある。夏羽は背が灰色で,下面が薄く赤みを帯びる。渡り鳥で,ユーラシア大陸東部の冷帯サハリン島千島列島のほか,北アメリカ北部のツンドラ地帯で繁殖し,北アメリカ南部や朝鮮半島,日本などで越冬する。日本には北海道に立ち寄ってから,本州以南に冬鳥として渡来する。田畑,草地,河原,海岸などにすみ,昆虫類などを食べる。セキレイ科のほかの種と同じく尾羽を頻繁に上下に振りながら歩く。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タヒバリ」の意味・わかりやすい解説

タヒバリ
たひばり / 田鷚
water pipit
[学] Anthus spinoletta

鳥綱スズメ目セキレイ科の鳥。同科タヒバリ属34種中の1種。タヒバリ属はほとんど全世界に分布し、牧場、草原、川原、耕地などに生息する。一般に緑褐色系のじみな保護色をしており、尾はセキレイ属ほど長くはないが、上下に振る習性は同様である。日本で秋冬季に普通にみられるのはタヒバリ、ムネアカタヒバリ、ビンズイの3種である。タヒバリは全長約16センチメートル。北半球の中・高緯度地方の寒冷地で繁殖し、冬季はエジプト、アラビア半島、中央アメリカなどにも南下する。日本の近くでは北千島で繁殖している。日本には本州以南に冬鳥として10月ごろ渡来し、3、4月ごろ渡去するが、琉球(りゅうきゅう)諸島に至るまで数は多い。昆虫類、草本の種子などを食べる。

[坂根 干]

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百科事典マイペディア 「タヒバリ」の意味・わかりやすい解説

タヒバリ

セキレイ科の鳥。翼長8.5cm。背面は褐色で暗褐色の斑紋があり,腹面は淡色。ユーラシア大陸中・北部,北米北部で繁殖するが局地的。冬には南へ渡る。日本には冬鳥として渡来し,全国の川辺,海岸,湿った耕地等に見られる。地上でえさをあさりながら,尾を上下に振る習性がある。日本で見られる近縁種に旅鳥のムネアカタヒバリがある。

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