タラント(読み)たらんと(英語表記)Taranto

精選版 日本国語大辞典 「タラント」の意味・読み・例文・類語

タラント

〘名〙 (talanton から) 旧約聖書では、三千シケルに相当する重量の最大単位をいう。新約聖書では、重量と、六千デナリに相当する通貨の単位をいう。のちにこのことばは、各自に与えられた神の賜物の意に使われるようになった。「才能」の意のタレント(talent)も、これに由来する。
旧約全書(1888)出埃及記「聖所の諸の工作をなすに用たる金は聖所のシケルにしたがひて言ば都合二十九タラント七百三十シケルなり」

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デジタル大辞泉 「タラント」の意味・読み・例文・類語

タラント(Taranto)

イタリア南部、プーリア州港湾・工業都市。タラント湾北部に位置する。紀元前8世紀にスパルタ人により建設され、紀元前4世紀に古代ギリシャの植民都市群の中心地になり、海洋貿易の拠点として栄えた。19世紀末以降、第二次大戦後の復興期に至るまで、海軍工廠こうしょう造船所製鉄所などが建設された。マーレピッコロ潟湖とマーレグランド湾の間の小島にある旧市街には、タラント大聖堂、サンドメニコマッジョーレ教会、アラゴン家のフェルディナンド1世が建てた城などの歴史的建造物が残されている。ターラント

タラント(〈ギリシャ〉talanton/〈英〉talent)

古代ギリシャ・ヘブライの重量単位、貨幣単位。タレント。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タラント」の意味・わかりやすい解説

タラント
たらんと
Taranto

イタリア南部、プーリア州にあるタラント県の県都で、港湾・工業都市。ギリシア名タラスTaras、ラテン名タレントゥムTarentum。人口20万1349(2001国勢調査速報値)。タラント湾の北部湾奥、マーレ・ピッコロとよばれる広いラグーン(潟湖(せきこ)、面積20平方キロメートル)の入口に位置する。西側に小湾マーレ・グランデがあり、ラグーンとの境界をなす小さな島を中心として旧市街が形成された。島はかつては本土と陸続きであったが、1480年に運河によって分断され、1887年に橋で結ばれた。旧市街には大聖堂(12世紀再建)、アラゴンのフェルディナンド1世(ナポリ王)によって再建された城(1480)、サン・ドメーニコ・マッジョーレ教会(1302)などがあり、中世おもかげが残されている。それに対して、東側本土には碁盤目状の道路を有する新市街、北側本土には工業地区が広がる。1861年のイタリア王国成立当時は人口2万8000の港町であったが、1883年の海軍工廠(こうしょう)建設と第一次世界大戦直前期における大造船所の設立によって、軍港・造船の町として発展した。1960年代になると南部開発政策の一環として、産業復興公社IRI(イリ)傘下の企業イタルシデルにより最新鋭の大製鉄所が建設され、それを契機にセメント、金属機械、化学などの関連諸工業も展開された。また漁業も重要で、マーレ・ピッコロではイガイとカキの養殖が盛んに行われている。

[堺 憲一]

歴史

紀元前8世紀にスパルタ人によって建設された。タラント湾南西岸のギリシア植民市シバリスの没落(前510)後、南イタリアのギリシア植民市群マグナ・グラエキアの中心都市になり、前4世紀に全盛期を迎えた。しかし前272年に始まるローマの支配下では、かつての重要性は大きく損なわれる。6世紀以降はゴート人を皮切りに、支配者が相次いで交代した。ナポレオン戦争期にはフランスの海軍基地となった。軍港としての機能は、その後1815~60年の両シチリア王国時代には等閑視されたが、スエズ運河の開通後ふたたび脚光を浴びるようになった。

[堺 憲一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タラント」の意味・わかりやすい解説

タラント
Taranto

古代名タラス Taras (ギリシア語) ,タレンツム Tarentum (ラテン語) 。イタリア南部,タラント湾奥に位置する軍港,商港都市。プーリア州タラント県の県都。かつては半島に位置したが,15世紀にアラゴンのフェルディナンド1世 (ナポリ王) が地峡部を開削して水道を通したために,岩石島の旧市と,本土側の新市とに分れた。前 700年頃にギリシア人の植民都市として建設され,指導的な位置にあった。ローマ時代には毛織物工業で栄え,ビザンチン,東ゴート,ノルマンなどの支配下におかれ,1861年のイタリア独立とともに,戦略上の重要性から軍港となった。旧市街には,古代の城,アラゴン公の城 (1480再建) ,イスラム風ゴシック様式の大聖堂 (11世紀) などが残り,狭い道をはさんで家屋が密集する。博物館は陶器など古代ギリシア遺物の収集で知られる。新市街は,軍港設備や兵器工場があり,南部開発の拠点として,製鉄業をはじめ造船,化学,煉瓦,食品などの工場が立地。商港としても活気づいている。カキとイガイが養殖される。人口 19万1810(2011推計)。

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