ダイフウシ(読み)だいふうし(英語表記)Hydnocarpi Semen

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ダイフウシ
だいふうし / 大風子
Hydnocarpi Semen

東南アジアに分布するイイギリ科の常緑高木の種子を乾燥したもので、これに含まれる脂肪油がレプラ(ハンセン病)の治療に用いられる。大風とは中国語でレプラを意味し、東南アジアの民間薬として皮膚病とくにレプラの治療にこれが用いられたことによる。種子から得る脂肪油を大風子油といい、とくに有名なのは次の3種類の油である。
(1)チョウルムグラ油Chaulmoogra oil アッサム、インド北東部に分布するクルジイ種Hydnocarpus kurzii (King) Warburgと、スリランカに固有なベネナータ種H. venenata Gaertn.から得た油。
(2)ヒドノカルプス油Hydnocarpus oil インド南部に分布するラウリフォリア種H. laurifolia (Dennst.) Sleumerから得た油。
(3)ルクラボ油Lukrabo oilまたはクラバオ油Krabao oil タイ、ベトナム、カンボジア、マレー半島、ジャワに分布するアンテルミンチカ種H. anthelminthica Pierreから得た油。
 これらのうち、ルクラボ油がもっとも多用されてきた。アンテルミンチカ種の葉は長披針(ちょうひしん)形で互生し、紅色の花を葉腋(ようえき)に集生する。果実は赤褐色を呈し、径約7センチメートルの球形で、中に30~40粒の種子をもつ。種子は多角形で、長さ約2センチ、径約1センチメートル。種子の皮を除き、圧搾して得られる黄色の脂肪油(30~40%)を薬に用いる。その成分はヒドノカルプス酸、チョウルムグラ酸、ゴーリ酸という特有の環状脂肪酸とそのグリセリンエステルで、全体の90%を占める。
 大風子油は、レプラ菌に感染しても5年以内ならば内服または注射によってよい治療結果を得ることができたため、以前は唯一のレプラ治療薬であった。副作用を軽くするためにチョウルムグラ酸エチルエステルを使用する。しかし、最近はプローミン、プロミゾール、ダイアゾンなどのスルホン剤がレプラに対して有効であることがわかったため、大風子油の使用は少なくなっている。[長沢元夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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