ダッカ襲撃事件(読み)だっかしゅうげきじけん

知恵蔵 「ダッカ襲撃事件」の解説

ダッカ襲撃事件

バングラデシュの首都ダッカで、2016年7月に起こったテロ事件。1日午後9時頃(現地時間)、武装グループが北部グルシャン地区にあるレストランを襲撃自動小銃で無差別に発砲した後、人質約30人を取って立てこもった。翌朝8時頃、治安部隊が店内に突入し、実行犯5人を射殺し、1人を拘束。人質13人(日本人1人)を救出したが、現場から20人(日本人7人)の遺体が見つかった。グルシャン地区は富裕層が多く住み、大使館や欧米資本のホテルが集中する高級エリアで、犠牲者の多くは外国人だった。
実行犯は全員がバングラデシュ国籍の20代イスラム教徒で、非イスラムの外国人を標的にしたことから、イスラム過激思想の影響を受けていたとみられる。襲撃した1日は、ラマダン(断食月)最後の金曜日で、イスラム教の最も神聖な祝祭日イードも控えていた。
事件後、過激派組織「イスラム国(IS)バングラデシュ」を名乗る組織が犯行声明を出し、実行犯5人の写真も公開したが、バングラデシュ治安当局は「バングラデシュ・ムジャヒディン集団(JMB)」を中心とする国内の複数の過激派組織による犯行とみており、ISの直接の関与については否定している。一方、ISはJMBを傘下に入れたことを表明しており、犠牲者9人を出したイタリアの外相も「ISの犯行声明は信用度が高い」と語っている。バングラデシュのカーン外相も、実行犯がISに接触した可能性については否定していない。事件から1カ月後の8月2日、地元の捜査当局はJMBの分派の指導者タミム・チョードリー容疑者と元軍幹部サイード・ジアウル・ハク容疑者を首謀者の疑いがあると発表した。チョードリー容疑者は、ISの機関誌に「バングラデシュ支部の司令官」として紹介されている。 (2016年8月4日時点)。

(大迫秀樹 フリー編集者/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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