日本大百科全書(ニッポニカ) 「ダニエル(旧約聖書)」の意味・わかりやすい解説
ダニエル(旧約聖書)
だにえる
Daniel
『旧約聖書』の「ダニエル書」の主人公。ダニエルは、ヘブライ語で「神はわが審判者」の意味。ユダ貴族の家に生まれ、エホヤキム王第3年の最初の捕囚のときバビロニアに移されるが、異教の権力と圧迫に抗して敢然と戦い、終始祖国イスラエルの回復を期待し続けた。とくに、終末的な神の国の勝利を幻に描き出し、神の支配の実現と悪(あ)しき権力の破滅を人々に預言した。旧約黙示文学の傑作に数えられるが、はたして「ダニエル書」のいうとおり、ダニエルが実在の人物であるかどうかは不明である。むしろ、古代イスラエルに残る伝承を用いて、黙示文学としての目的に沿って創作された人物とみるのが正しい。
[山形孝夫]
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