日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
チェック(Thomas Robert Cech)
ちぇっく
Thomas Robert Cech
(1947― )
アメリカの化学者。シカゴに生まれる。グリネル大学で化学を学び、1970年に卒業、カリフォルニア大学に進み、1975年博士号を取得した。マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士研究員となり、1978年にコロラド大学に移り、準教授を経て、1983年教授に昇格した。ハイネケン賞など数々の賞に輝き、1987年には国立科学アカデミーの会員になっている。
チェックはコロラド大学でRNA(リボ核酸)の研究を開始した。原生動物のテトラヒメナTetrahymenaの細胞を用いて、リボゾームRNA(rRNA)の切断加工(スプライシング)の実験を行い、RNA中にある遺伝情報をもたないイントロンとよばれる部分を切り離す酵素の発見に取り組んだ。実験の結果、イントロンを切り離す過程では、従来考えられていた酵素タンパク質は必要とせず、RNA自身が触媒の機能をもつことがわかり、1981年にこのRNAによる酵素活性をリボザイムribozymeと命名した。RNAの触媒機能は、1983年に行ったS・アルトマンの実験によって確実なものとなった。この業績によって、1989年にチェックとアルトマンはノーベル化学賞を受賞した。
[編集部]