日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
チェンバリン(Edward Hastings Chamberlin)
ちぇんばりん
Edward Hastings Chamberlin
(1899―1967)
アメリカの経済学者。1920年アイオワ州立大学を卒業し、ミシガン大学で修士、ハーバード大学で博士の学位を取得。ハーバード大学の助教授を経て、1937年教授となり、1939~1943年経済学部長。アメリカの有名な学術誌『クォータリー・ジャーナル・オブ・エコノミックス』Quarterly Journal of Economicsの編集長を務めたこともある。彼の主著『独占的競争の理論』The Theory of Monopolistic Competition(1933)は、わずかに遅れてイギリスで発表されたJ・ロビンソンの「不完全競争の理論」とともに、当時の主要な問題である「独占理論」に革新的な衝撃を与えた。チェンバリンは、独占の問題を解明するに際して企業による製品差別化を重視し、製品差別化により企業は独占力を有するようになるが、このような企業が多数存在するため競争的な力も市場に混在するとして、独占と競争の二要素が混交した現実的な市場を提示し、新しい独占的競争の理論を展開した。このような市場状態の理論的説明の成功は、その後の寡占理論や産業組織論の発展に大きな道を開くものであった。
[内島敏之 2018年9月19日]
『青山秀夫訳『独占的競争の理論』(1966・至誠堂)』