日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョウ(寄生虫)」の意味・わかりやすい解説
チョウ(寄生虫)
ちょう
carp louse
[学] Argulus japonicus
節足動物門甲殻綱鰓尾(さいび)目チョウ科に属す、淡水魚類の寄生虫。日本からヨーロッパ、アメリカに広く分布する。キンギョ、コイ、フナなどの体表に付着するが、宿主から離れて泳ぐこともできる。体長5ミリメートル前後が普通であるが、大きいものは約1センチメートルに達する。背腹に扁平(へんぺい)で、円に近い楕円(だえん)形。甲の側葉の発達には変異があり、短い場合は第3遊泳脚をわずかに覆う程度、長い場合は第4胸脚を完全に覆う。腹面にある第1小顎(しょうがく)の変形した吸盤と触角の変形した鉤(かぎ)で魚の体表に密接し、左右の吸盤の間にある刺針で毒液を注入し、吻(ふん)で宿主の体液を吸収する。このため多数の個体が寄生すれば魚は衰弱死する。卵は水草などに産み付けられるが、15~30日、体長0.7~0.9ミリメートルで孵化(ふか)し、7回の脱皮を経て成体になる。孵化した幼生は吸盤をもたず、第1小顎は強い鉤になっているが、宿主に出会うとすぐ付着する。3、4日で第1回の脱皮を行うが、第4回目の脱皮で吸盤ができる。駆除は、ピンセットで取り除くのが確実であるが、殺虫剤ディプテレックスなどの薬浴も有効である。
チョウ類は3属約100種知られているが、海産のウミチョウA. scutiformisが最大で、体長3センチメートルに達する。この種はフグ、マンボウなどの体表につき、淡青色の地に紫褐色の斑点(はんてん)が多数ある。
[武田正倫]