日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツマグロハタンポ」の意味・わかりやすい解説
ツマグロハタンポ
つまぐろはたんぽ / 端黒葉丹宝
Japanese sweeper
blackfin sweeper
[学] Pempheris japonica
硬骨魚綱スズキ目ハタンポ科に属する海水魚。日本では八丈島、小笠原(おがさわら)諸島、房総半島から鹿児島県硫黄島(いおうじま)・竹島(たけしま)を経て、沖縄本島までの西太平洋、世界では済州島(さいしゅうとう)（韓国）の海域のみに分布する。体高は高く、強く側扁(そくへん)し、体長は体高の2.1～2.3倍。体の背外郭は背びれの起部までは緩く湾曲し、その後は尾柄(びへい)までほとんど直線状。腹外郭は臀(しり)びれ起部まで一様に強く湾曲し、直線状に上昇し、尾びれ基底近くに達する。吻(ふん)は著しく短い。目が大きく、頭長は眼径の2.2～2.6倍。口は大きくて、斜位。上顎(じょうがく)の後端は目の中央部下に達する。下顎は上顎よりも突出する。上下両顎、鋤骨(じょこつ)（頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨）、口蓋骨に微細な歯がある。鰓耙(さいは)は上枝に8～12本、下枝に20～22本。体側鱗(りん)は強い櫛鱗(しつりん)で、はがれにくい。鱗(うろこ)は厚くて、上下縁は中央でくびれる。側線は鰓孔(さいこう)の上端から尾びれの後端まで達する。側線孔は71～82。両眼間隔域に鱗がない。臀びれの基部の3分の1は鱗をかぶる。背びれは1基で、体の中央部よりやや前方に位置し、小さくて、基底長は最長鰭条(きじょう)長より短い。背びれは6～7棘(きょく)10～12軟条。最前棘は最短で、最後棘は最長。臀びれは背びれ基底の中央部下方から始まり、3棘35～40軟条。臀びれ基底長は長く、体長の40％以上。尾びれの後端は二叉(にさ)する。体色は銅褐色で、腹面はやや白い。背びれと臀びれの先端部は黒いが、残りの部分およびその他のひれは銅褐色。沿岸の岩礁域にすむが、大きい群れをつくらない。日中は岩やサンゴの下や穴の中にいて、夜間に外に出て摂餌(せつじ)する。体長15センチメートルほどになる。定置網などで漁獲されるが、一般にそれほど利用されていない。
［尼岡邦夫 2022年12月12日］
