トゥラニズム(読み)とぅらにずむ(英語表記)Turanism

日本大百科全書(ニッポニカ) 「トゥラニズム」の意味・わかりやすい解説

トゥラニズム
とぅらにずむ
Turanism

トルコ民族を中心に、ウラル・アルタイ系諸語族を統一する汎(はん)トルコ民族主義運動の一つ。トゥランとはトルコ系諸民族の総称。ヨーロッパ人の支配を受けていたマジャール人フィン人、モンゴル人、ツングース人、トルコ人などが民族運動を開始し、汎スラブ主義に対抗する運動として成長した。しかし、運動範囲の広さや、指導理念の不確定さのために、あいまいなものとなっていた。1908年の青年トルコ党革命で、オスマン帝国の政権についた「統一と進歩委員会」は、当初の主張であった汎オスマン主義が破綻(はたん)したことから、汎トゥラニズムに転向した。エンベル・パシャなどのトルコ人指導型のトゥラニズムは、十分な成果を得られず、オスマン帝国の第一次世界大戦敗北のあと、中央アジアで若干の動きがあったものの失敗した。しかしトゥラニズムは汎トルコ主義へと発展し、トルコ人の国家を標榜(ひょうぼう)するトルコ共和国成立の基礎となった。

[設楽國廣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 世界史小辞典 改訂新版 「トゥラニズム」の解説

トゥラニズム
Turanism

トゥランとはペルシア語に由来し,オクソス川彼方(かなた)をさす。トゥラニズムとは,ユーラシアに分布するフィン,マジャル,トルコ,モンゴル,トゥングース,サモイェードなどの諸民族発祥地をトゥランに見立て,さらに朝鮮,日本民族にも関連性を求め,この名のもとに一大血族の分岐として再認識し,相互に提携すべしという思想である。ハンガリーで起こり,トルコ民族主義に深い影響を与えた。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

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