トリガー戦略(読み)とりがーせんりゃく(英語表記)trigger strategy

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ミクロ経済学のゲーム理論において、相手が協力的ならば協力するが、いったん非協力に転じた場合、それ以降、ずっと相手に不利な行動をとり続ける戦略。実際の経済の世界では、たとえば、主要国どうしが貿易交渉においてトリガー戦略をとると、関税率ゼロの自由貿易が交渉の落としどころ(ナッシュ均衡)になることが知られている。
 利害の異なる経済主体(個人、企業、国家など)が別々に行動する非協力ゲームの場合、それぞれが戦略的に満足できる落としどころ(ナッシュ均衡)が存在することが知られている。ただこのナッシュ均衡は経済主体にとって最適の選択ではない(パレート非効率的)ことが多い。しかしゲームを何度も行う「繰り返しゲーム理論」では、経済主体にとって最適(パレート効率的、パレート最適)なナッシュ均衡が存在することがわかっている。繰り返すうちに、「トリガー戦略」や、相手が非協力になったら非協力で応じる「しっぺ返し戦略」が登場するためである。この結果、経済主体はともに協力する状態が持続することになる。これを一般化したものを「フォークの定理」とよんでいる。
 非協力ゲーム理論では、「囚人のジレンマ」が引用されることが多い。共犯の2人の囚人がもし相手を裏切って自分だけが自白をすれば刑が軽くなるが、2人とも自白した場合はもっとも罪が重くなるというモデルで、2人とも自分の利得を最大化しようとして、結果的に、2人とも自白するという囚人らにとっては最悪の結果(ナッシュ均衡)になる。つまり非協力ゲームでは、個々の最適な選択が、全体として最適な選択にはならない(ナッシュ均衡はパレート非効率的である)ことを意味する。しかしゲームを繰り返す場合、過去の行動を基に戦略を選ぶため、2人とも自白しないというパレート効率的な組合せ(ナッシュ均衡)も存在する。この繰り返しゲームの場合、いったん相手が自白したら、自分も自白し続けるというトリガー戦略が存在するため、結局は、ともに協力するナッシュ均衡(2人とも自白しない)に落ち着くと説明されている。[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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