改訂新版 世界大百科事典 「トレードユニオニズム」の意味・わかりやすい解説
トレード・ユニオニズム
trade unionism
〈労働組合主義〉と訳される。労働運動に関する思想の一つで,労働組合運動を重視する傾向をもつ。元来は労働組合運動そのものをさす用語であるが,レーニンがマルクス主義の立場からイギリス労働運動を批判した(《何をなすべきか》1902)際にイギリスの運動をこの言葉で特徴づけたため,社会体制の変革の必要を軽視し,賃金労働者の労働条件の改善など経済的利害を偏重する思想を意味する言葉として使われている。イギリスでは労働組合が発達していたので政治活動も労働組合を母体として生まれた労働党によって担われ,資本主義体制の枠内での改良を重視したが,マルクス主義においては改良主義は体制変革を妨げるものとして批判されていた。しかし近年は,労働組合運動が強力な場合には,資本主義経済の危機的状況のなかで労働者階級の利益や権利を確保することに有効に作用している側面を重視して,非妥協的な労働組合活動を推進する思想をこのように呼ぶ例も多くなっている。
執筆者:栗田 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報