日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ドン・ジュアン(バイロンの叙事詩)
どんじゅあん
Don Juan
イギリスの詩人バイロンの16編からなる未完の長編叙事詩。1819年に第1、2編刊行後、次々と発表、最後の第15、16編は死の1か月前(1824)に出た。セビーリャの一青年ドン・ジュアンは16歳のとき、人妻との恋のゆえ国外に逃れるが、暴風のためギリシアの島に漂着する。海賊の娘を恋し、そのため奴隷としてコンスタンティノープルへ売られるが、脱走してダニューブ(ドナウ)のロシア軍の陣営にたどり着く。そこで武勲をたてて、キャサリン女帝の寵(ちょう)を受け、ついにその使者としてイギリスに渡り、イギリスの文物を次々と槍玉(やりだま)にあげるところで中絶する。人間と社会、ことにイギリスの支配階級とその文化を冷嘲(れいちょう)かつ痛罵(つうば)した作品として、詩人の最後を飾る。
[上田和夫]
『小川和夫訳『ドン・ジュアン』上下(1993・冨山房)』
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