ドーピング(英語表記)doping

翻訳|doping

精選版 日本国語大辞典 「ドーピング」の意味・読み・例文・類語

ドーピング

〘名〙 (doping) 各種の運動競技で、出場選手が運動能力を増進させるために、事前に興奮剤刺激剤を服用すること。不正行為として禁止されている。→ドープ‐チェック

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デジタル大辞泉 「ドーピング」の意味・読み・例文・類語

ドーピング(doping)

[名](スル)スポーツ選手が競技出場前に運動能力を増進させるための刺激剤・興奮剤などを服用すること。不正行為として禁止されている。→反ドーピング
半導体不純物を添加すること。→ドーパント

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改訂新版 世界大百科事典 「ドーピング」の意味・わかりやすい解説

ドーピング
doping

スポーツ選手が競技を行う際,体力を集中的に発揮させることを目的として,ある種の薬物の内服や注射などを行うこと。19世紀の中ごろから,試合に勝つために選手にいろいろな薬物などを投与することが広まってきた。初めは競走馬や競走犬に薬物を与えることをドーピングと呼んでいたが,それがスポーツ界でも用いられるようになった。ドーピングの方法としては,中枢神経興奮剤,交感神経興奮剤,麻薬鎮痛剤,精神安定剤(トランキライザー)などの薬物を投与するほかに,電気刺激などの物理的方法や催眠術,暗示などの心理的方法もあるが,現在は主として薬物などが用いられており,このときに用いられる薬物をドープdopeという。20世紀に入ってからドーピングによる選手の死亡事故その他の弊害が増加したため,ドーピングを規制する運動が起こった。1964年東京で開催されたスポーツ科学会議で〈ドーピングとは,選手の競技能力をたかめるために,人体に生理的に存在しない物質や,生理的物質であっても異常な量や方法でそれを選手に投与すること〉と定義され,国際オリンピック委員会(IOC)でも68年のオリンピアードからドーピングの検査を開始した。1997年現在,IOCではドーピング薬物と禁止方法として次のものをあげている。まず,禁止薬物として,(1)興奮剤,(2)麻薬鎮痛剤,(3)タンパク同化剤,(4)利尿剤,(5)ペプチドならびに糖タンパクホルモンとその同族体,次に,禁止方法として,(1)血液ドーピング,(2)薬理学的・化学的・物理的操作,そして,一定の規制の対象となる薬物として,(1)アルコール,(2)マリファナ,(3)局所麻酔剤,(4)コルチコステロイド,(5)β遮断剤である。検査は主として選手の尿をとって化学的に分析をする方法がとられる。ドーピング検査は従来競技会において行われていたが,近年はトレーニング期に使用するタンパク同化剤がドーピングの主役となったため,1980年代からはトレーニング期においても,タンパク同化剤を主な対象として抜きうち的に検査を行うことが多くなっている。
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百科事典マイペディア 「ドーピング」の意味・わかりやすい解説

ドーピング

(1)真性半導体に微量の不純物をまぜて不純物半導体をつくるとき,この不純物をまぜる操作をドーピングという。→半導体(2)スポーツ選手が競技能力や成績を高めるために薬物を使用することをいう。薬物には,筋肉増強剤興奮薬利尿薬など非常に多くの種類があるが,ステロイドホルモンを主とする筋肉増強剤が主流である。筋肉増強はすべてのスポーツに共通のメリットであるためか,この種のドーピングは後を絶たない。今のところ禁止対象薬物が増えても,似た効果を持つ薬物が新たに開発され,使用されるといった悪循環が続いている。競技の公平,スポーツの価値を損なうだけでなく,選手の体にも悪影響を及ぼす。なお,薬物を使用しない血液ドーピングも禁止されている。2005年10月の第33回ユネスコ総会において,ドーピングの撲滅を目指した〈アンチ・ドーピング条約〉が採択された。
→関連項目近代スポーツジョンソン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドーピング」の意味・わかりやすい解説

ドーピング
doping

スポーツ選手が試合に際し薬物を使用すること。スポーツ精神の立場と医学上の立場から,特にヨーロッパで薬物使用が問題とされ,1960年ローマ・オリンピック競技大会でデンマークの自転車選手がドーピングのために死亡した事故がきっかけとなって 1968年グルノーブル・オリンピック冬季競技大会から正式にドーピング検査が行なわれるようになった。薬物使用者は出場停止または失格となる。禁止薬物には,交感神経作動アミン,中枢神経刺激剤(→中枢興奮剤)や麻薬鎮痛剤(→鎮痛剤),筋肉増強剤のアナボリックステロイド蛋白同化ホルモン),利尿剤などがある。1988年ソウル・オリンピック競技大会カナダのベン・ジョンソンが陸上競技男子 100mで金メダルを獲得したものの,レース後のドーピング検査でアナボリックステロイドが検出され失格となって,世間の関心を集めた。一方で禁止薬物の成分は風邪薬などにも含まれており,知らずに服用して問題となる例もある。もとは競馬において,よい成績を上げるために競走馬に与える薬物をドープというところから用いられ始めたことばで,競馬では薬物の投与が発見されると入着は取り消され,その競走馬の関係者は処罰される。

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化学辞典 第2版 「ドーピング」の解説

ドーピング
ドーピング
doping

】半導体材料や導電性材料に少量の不純物(キャリヤー)を添加することにより電気的特性を制御することをいう.たとえば,ポリアセチレンは,わずかに電気を通す半導体的性質を示すが,ヨウ素をドープ(dope)すると,電気伝導率は1千万倍も増加し,銅と同じくらいの電気伝導率を示すようになる.多くの分子性導電体では,ドーピングにより導電体の電子数などを変化させて電気的特性を制御することができる.【】スポーツ競技において禁止薬物を使用する違反行為.[別用語参照]アナボリックステロイドエリトロポイエチンメタンフェタミン

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

知恵蔵 「ドーピング」の解説

ドーピング

禁止されている薬物を投与すること。ステロイドホルモンや成長ホルモンなどの筋肉増強剤が主流であり、テトラハイドロゲストリノン(THG)やデソクシメチルテストステロン(DMT)など、ホルモン剤の化学構造を部分変化させ合成したアナボリック・ステロイド(男性ホルモン作用をもつたんぱく質同化ステロイド)が近年主に使われている。このほか、興奮剤のエフェドラ(麻黄)は交感神経活動を活発化し、利尿作用もあるのでダイエットのために使用されることもある。また、造血ホルモンのエリスロポエチン(EPO)とその代替薬物となる貧血治療薬のダーベポエチン(DPO)は、スタミナ増強剤としてドーピングされてきた。世界アンチ・ドーピング機構(WADA)が中心になってドーピング抑制・教育・啓発活動を展開している。

(鈴木正成 早稲田大学スポーツ科学学術院特任教授 / 2007年)

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