ナガキクイムシ(読み)ながきくいむし

改訂新版 世界大百科事典 「ナガキクイムシ」の意味・わかりやすい解説

ナガキクイムシ (長木喰虫)
pinhole borer

甲虫目ナガキクイムシ科Platypodidaeの昆虫総称。世界から約1000種が記録されているが,そのほとんどは熱帯,亜熱帯に分布し,日本からは18種が知られているにすぎない。体は円筒形で細長く,褐色のものが多い。頭部は胸部に覆われず幅が広い。触角の先端は球桿(きゆうかん)状で,跗節(ふせつ)の第1節が著しく長い。体長2~8mm。キクイムシ科に近縁で,成虫幼虫ともに木材の中で生活する。雌雄が対になって(一夫一妻性)木材中に営巣し,孔道の中にアンブロシア菌を繁殖させて幼虫の食物とする。菌の胞子は多くの種類では前胸背の後方中央にある小孔群に蓄えられる。幼虫は白色円筒形で胸脚を欠く。ヤチダモノナガキクイムシCrossotarsus niponicusは体長6mm内外。翅端の両側が後方へ突出する。胞子は口腔内に蓄える。日本各地に分布し,カシ・シデ・クルミ類などの広葉樹穿孔(せんこう)する。ルイスナガキクイムシPlatypus lewisiは体長5mm内外。上翅には点刻からなる条溝があり,各翅端には2個の突起がある。本州,九州に分布し,コナラ・クリ・カシ類などの広葉樹に穿孔する。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナガキクイムシ」の意味・わかりやすい解説

ナガキクイムシ
ながきくいむし / 長木喰虫

昆虫綱甲虫目ナガキクイムシ科Platypodidaeの昆虫の総称。世界各地に分布するが、主として熱帯・亜熱帯域に産し、1000種以上が記録される。日本からは約20種が知られている。体長3~8ミリメートルぐらい。キクイムシ科に近縁で、体は円筒形であるが細長く、頭は前胸と同じ幅で前へ出っ張っており、脚(あし)の跗節(ふせつ)は細長く、とくに第1節がきわめて長い。色は黒褐色から黄褐色。おもに広葉樹の材に深い孔道をつくる害虫で、孔道内にいわゆるアンブロシア菌という特殊な菌を生育させ、幼虫とともにそれを食べて生活する習性をもつ。この菌はおもに雌の口内、前胸背面の小孔群、基節孔内に蓄えられ、新しい孔道内へ運ばれる。

[中根猛彦]

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