ニオブ酸(塩)(読み)ニオブサンエン

化学辞典 第2版 「ニオブ酸(塩)」の解説

ニオブ酸(塩)
ニオブサンエン
niobic acid(niobate)

酸:Nb2O5nH2OをHxNbyOznH2Oとみなしてニオブ酸とよぶが,nは一定せず,むしろNb2O5の水和物と考えられる.M3NbO4水溶液に酸を加えると,白色の無定形沈殿として得られる.水や希酸に不溶,濃い塩酸硝酸,フッ化水素などに可溶.
塩:MxNbyOznH2Oの組成をもつものをニオブ酸塩というが,結晶構造からは複酸化物xM2O・yNb2O5zH2Oが多く,その場合には複酸化物式の命名のほうがよい.【】M3Nb O4:M = Kのものは,テトラオキソニオブ酸カリウム,通称,オルトニオブ酸カリウム(複酸化物としての名称は四酸化ニオブ(Ⅴ)三カリウム).K,Naなどのアルカリ金属塩は,Nb2O5 と各元素の炭酸塩をモル比1:4に混合,加熱すると得られる.LaNbO4などはフェルグソン石型構造で,ひずんだ四面体型のNbO4を含むが,多くは構造上複酸化物である.【】MNbO3:M = Kのものは,トリオキソニオブ酸カリウム[CAS 12030-85-2],通称,メタニオブ酸カリウム(複酸化物としての名称は三酸化ニオブ(Ⅴ)カリウム).NbO3塩はニオブ酸塩中でもっとも多い.アルカリ金属塩は,Nb2O5と各元素の水酸化物または炭酸塩の等モル混合物を加熱溶融すると得られる.K,Na塩結晶はペロブスカイト型構造,LiNbO3[CAS 12059-51-7]はイルメナイト型構造Pb(NbO3)2[CAS 12034-88-7]はタングステンブロンズ型構造.いずれも誘電的特性があり,電子材料に用いられる.[別用語参照]三酸化ニオブ(Ⅴ)リチウム】イソポリ酸塩:たとえば,六ニオブ酸塩M8[Nb6O19]・nH2O.アルカリ金属塩は,Nb2O5と過剰のアルカリ水酸化物または炭酸塩を混融し,生成物を水に溶かすと得られる.強アルカリ性水溶液中では [NbO2(OH)4]3- であるが,より pH が小さい領域では [HxNb6O19](8-x)-(x = 0,1,2,3)となる.結晶中で [Nb6O19]8- は,図のように,6個の正八面体型のNbO6が各稜のO原子を共有してつながった構造をもつ.6個のNb原子は正八面体型に並んでいる.このほかに,五ニオブ酸塩として,タングステンブロンズ型構造をもち,レーザー光変調結晶に用いられるBa2Na[Nb5O15](BNN)などもある.【ヘテロポリ酸:たとえば,Na12[Mn(Nb12O38)]・50H2O.結晶では2個の [Nb6O19]8-中心の Mに結合した構造をもつ.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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