ニコチン剤(読み)ニコチンざい

改訂新版 世界大百科事典 「ニコチン剤」の意味・わかりやすい解説

ニコチン剤 (ニコチンざい)

タバコの葉に含まれるアルカロイドニコチンを有効成分とする殺虫剤。タバコが害虫駆除に用いられた記録は,17世紀後期にみられる。殺虫有効成分にはニコチンのほかにノルニコチン,アナバシンanabasineなどの同族体が知られており,それらをニコチノイドと総称する。

 ニコチノイドは一般に硫酸塩の水溶液(商品名ブラックリーフ,硫酸ニコチン)として用いられ,適用害虫はアブラムシグンバイムシ,アザミウマ,ハモグリガ,ワタムシ,キジラミなどである。ニコチン,ノルニコチン,アナバシンのアブラムシに対する殺虫力の比は,1:2:10でアナバシンの殺虫力が最も強力である。硫酸ニコチンの哺乳動物に対する急性毒性は50%致死量LD50=24mg/kg(マウス,経口)とかなり高く,毒物に指定されている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニコチン剤」の意味・わかりやすい解説

ニコチン剤
にこちんざい

タバコのアルカロイドであるニコチンnicotineを成分とする殺虫剤。通常は、タバコの葉などからニコチンを水蒸気蒸留して硫酸と反応させた40%含量品が使われる。速効性であるが残効性はほとんどない。野菜果樹のアブラムシ、スリップスなどの防除に広く用いられたが、最近はほかの天然殺虫剤と同様にほとんど使用されていない。

[村田道雄]

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