ニッケル-水素電池(読み)ニッケルスイソデンチ

化学辞典 第2版 「ニッケル-水素電池」の解説

ニッケル-水素電池
ニッケルスイソデンチ
nickel-hydrogen battery

ニッケル-カドミウム電池カドミウム負極を金属水素化物MHxに置き換えた二次電池.1990年に実用化された.ニッケル-カドミウム電池より高容量であり,環境に対して負荷を与えるカドミウムを用いていないため,家庭用ビデオカメラ,ノート型パソコン,デジタルカメラなどの携帯機器で普及した.ニッケル-カドミウム電池と同様に,正極には水酸化酸化ニッケルNiO(OH)を,電解液は水酸化カリウム水溶液が用いられる.各電極反応と全電池反応は次式で示される.

 負極:MmHxxOH MmxH2O + xe

 正極:xNiO(OH) + xH2O + xe xNi(OH)2xOH 

 全電池反応:MmHxxNiO(OH) MmxNi(OH)2 

ここで,Mmミッシュメタル.右方向の反応は放電,左方向は充電である.全電池反応はニッケル-カドミウム電池と異なり,見掛け上は水を消費せず,水素イオンを正極と負極でやりとりしているだけであり,密閉化が容易である.出力・エネルギー密度・寿命のバランスがよく,材料についても資源的側面および環境的側面における問題が少ないため,ハイブリッド電気自動車の電源としても使われている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニッケル-水素電池」の意味・わかりやすい解説

ニッケル-水素電池
ニッケルすいそでんち
nickel-metal hydride cell

基本的には,ニッケル-カドミウム電池のカドミウムをより環境にやさしい水素吸蔵合金電極で置き換えた新しいアルカリ蓄電池。質量あたりの貯蔵エネルギー密度はリチウムイオン電池に劣るが,大電流での放電・充電特性にすぐれた比較的安価な実用蓄電池。充電時には電解液中の H+ イオン水素原子として合金中へ収容され,放電時にはこれと逆向きの反応が起る。

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