ニレ(楡)(読み)ニレ(英語表記)Ulmus spp.; elm

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ニレ(楡)」の意味・わかりやすい解説

ニレ(楡)
ニレ
Ulmus spp.; elm

ニレ科の落葉高木。ハルニレ U. davidiana var. japonicaとその近似種の総称。北半球の温帯を中心にオウシュウニレ,アメリカニレ,シナニレなど 20種ほどの同属植物がある。日本にはハルニレ,アキニレ U. parvifoliaオヒョウ U. laciniataの3種が自生する。ハルニレは北海道や本州北部に多く,北海道大学構内のものが有名である。樹高 20~30mで幹の樹皮は縦に裂け目が入る。葉は楕円形で先端がとがり,左右は不対称である。春に,黄緑色の小花を多数集めて開花し,種子が翼の上部にある。アキニレは本州中部以西から南に分布し,花や実が秋につく。葉はハルニレより小さく,長さ2~5cmで種子は翼の中央部につく。オヒョウは特に北海道に広く分布し,葉は大きく上部が3つに分れて中央片は尾のように長く伸びる。皮の繊維は強く,「あつし」と呼ばれるアイヌの衣装はこれからつくったものである。なおアキニレは街路樹盆栽にもよい。中国では樹皮を薬用,木の汁を塗料にする。

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百科事典マイペディア 「ニレ(楡)」の意味・わかりやすい解説

ニレ(楡)【ニレ】

ふつうハルニレをさす。ニレ科の落葉高木。日本全土の山地にはえるが,四国,九州には少ない。東アジアにも分布。葉は長さ3〜15cm,倒卵形で基部が左右不同,厚く表面はざらつき,縁には鋸歯(きょし)がある。3〜5月,葉の出る前,前年の枝に褐紫色の小さな両性花を密につける。果実は長さ1cmほどでうちわ状の翼があり,6月,淡褐色に熟す。材は弾性に富み,建築,器具,細工物とし,樹は庭木とする。ニレは滑(ぬ)れの意で,皮をはげば粘滑なのに由来。本州中部〜沖縄にはえるアキニレは,葉が小型で長さ2.5〜5cm,9月ごろ淡黄色の花を開く。街路樹や庭木とする。

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